創業家の内紛シリーズ(3) 親子、兄弟の争い編

「創業家の内紛シリーズ」の第3回目は、「親子、兄弟の争い編」としてロッテ、大塚家具<8186>、ユニバーサルエンターテインメント<6425>の3社を取り上げたい。身内同士の争いであるがゆえに、かえって容赦のない攻防が繰り広げられているようにも映る3社の事例を紹介したいと思う。

■日韓をまたぐロッテ創業家の兄弟げんか

「お口の恋人」というキャッチコピーでお菓子業界の一角を担ってきたロッテの歴史は、戦後間もない1948年にまでさかのぼる。現名誉会長の重光武雄(辛格浩、シン・ギョクホ)氏がチューインガムの製造販売を行う株式会社ロッテを日本において設立したことがその始まりだ。

2009年に武雄氏が第一線から退いたあとは、長男である宏之氏と次男である昭夫氏がともに経営に関与してきたが、しだいに両者間における対立が見られるようになる。

ロッテグループの各社では次男である昭夫氏を推す声が多いものの、武雄氏を始めとする創業家では長男である宏之氏を後継者とする見方が優勢であるため、事態を複雑化させた。また、創業家は韓国でも財を成しているため、この兄弟間の経営権争いは日本と韓国の両国間にまたがる兄弟げんかの様相を帯びてきたのであった。

2015年頃には昭夫氏が経営の主導権を掌握するようになっており、宏之氏は自身や重光氏の代表権の復活を内容とする株主提案を提出するものの、株主でもあるグループ各社が昭夫氏を支持する姿勢は変わらず、総会決議では否決が続いていた。

そうした中、2016年10月には、武雄氏、宏之氏、昭夫氏を含む創業家メンバーが横領などの罪で韓国のソウル中央地検により在宅起訴されるなどして、事態はさらに混迷を極めた。

武雄氏は2015年に代表権を奪われることとなった取締役会決議に対する無効確認の訴えを起こしていたが、2017年4月の東京地裁では請求棄却となっており、現在も昭夫氏が代表権を持つ体制が維持されている。

■娘が経営権を握るも正念場は続く大塚家具

大塚家具の創業者である大塚勝久氏と娘の久美子氏の経営権を巡る対立は、格好のワイドショーネタともなり、連日テレビなどで報道されていたことは記憶に新しい。

業績不振を理由に一度は第一線を退き、娘を社長とした勝久氏であったが、改革路線を進む久美子社長に対して待ったをかけ、2014年7月には久美子社長を解任することになったのが泥沼劇のはじまりだった。

強引に旧経営体制に回帰させようとする勝久氏の施策で業績はさらに悪化する。ファーストリテイリングの柳井氏が社長に復帰して快進撃を遂げた事例もある。勝久氏の創業者ならではの経営手腕に期待するむきもあったが、業績悪化はあまりにも激しく社内にも動揺が走る。

わずか数か月後の2015年1月、勝久氏の施策を問題視した取締役会は経営の在り方について協議。取締役間で意見が分かれたものの、僅差で久美子氏の社長復帰を決定した。

それに続く3月の株主総会では、勝久氏が独自の役員選任案を提出するものの、委任状争奪戦(プロキシーファイト)の末、久美子氏側が信任を得ることになる。

結局、大塚家具を去ることとなった久勝氏は「匠大塚」を立ち上げ、高級家具の販売に特化した業態を展開する。大塚家具の経営権は久美子氏のもとに戻ったとはいえ、業績は悪化の一途をたどっており、社運をかけた事業立て直しはまだ道半ばといったところだ。

■お金に絡む問題が顕在化したユニバーサルエンターテインメント

2016年12月、フィリピンのマニラ沿岸部に世界最大級のカジノリゾートOKADA MANILAが開業した。このカジノを手掛けたのは、パチスロ、パチンコ機メーカーであるユニバーサルエンターテインメントの創業者岡田和生氏だ。

しかし、こうした華々しいIR施設オープンの陰で和生氏と長男の知裕氏らとの対立がくすぶっていた。2017年5月、大株主でもある知裕氏は、和生氏を資産管理会社である岡田ホールディングスの代表から外すとともに、翌6月に開催されたユニバーサルエンターテインメントの株主総会で会長職から解任したのである。

解任劇のきっかけの1つは、2015年に和生氏の指示により、香港子会社を通じて第三者に20億円を貸し付けたことにあると見られる。ユニバーサルでは、当該貸付を問題視し、弁護士で構成される特別調査委員会を立ち上げて調査を実施した。2017年8月に公表された調査結果においては、貸付は和生氏が独断で実施したものであり、最終的に自己の利益を保護するために会社に経済的損失を与えたものであると評価している。

和生氏はユニバーサルの会長を解任された後、岡田ホールディングスの株式9.8%を保有する長女の裕実氏と複数回にわたり会食や話し合いを行い、裕実氏の理解を得ることに成功する。和生氏が保有する46.4%と合わせて過半数の議決権を持つことにより、同社代表への復帰に道筋を付けた。

2017年9月には岡田ホールディングスの臨時株主総会で和生氏の代表復帰が決議されたものの、こうした手続に対して、知裕氏は法的問題があると主張しており、親子間の紛争は今後も続いていくものと見られる。

■「自分の会社」という意識が招く創業者の暴走

株式公開することを「go public」と呼ぶことからわかるように、上場企業は創業者のプライベートな所有物ではなく、パブリックな存在である。

しかし、「自分の会社」という意識が抜けないからこそ、ロッテでは創業家による横領疑惑が、大塚家具では勝久氏による強引な経営体制の後戻りが、ユニバーサルエンターテインメントでは貸付に関する独断での意思決定が生じたとも言える。

コーポレートガバナンスの重要性が声高に叫ばれるようになったご時世では、意思決定におけるデュープロセスの欠如は関係者の理解を得られないばかりでなく、身内によって足元をすくわれる要因ともなるのである。

文:M&A Online編集部