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MBOとプレミアム(下)経営陣が安く買い叩けないワケ レックス事件など影響

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経営陣の買付価格介入が暴露されたシャルレ事件 

 各論的にもなるものの、一応シャルレ事件にも触れておきたい。

 シャルレ事件では買付者である取締役が買付価格の決定に介入し、これを内部通報されてMBOが頓挫したのだが、MBOを頓挫させたことで会社に損害を与えたとして、株主は社外取締役も含めて経営陣に損害賠償を求めた。当初の請求額は5億円に上る。MBOの頓挫によって会社に余計な支出をさせた……という点を責められているのだが、頓挫の理由は社内から買付価格への介入が暴露されたことにより対象会社が不賛同、金融機関も融資を断ったことである。

 経営陣にしてみれば、プロジェクトチームを丸め込み社外取締役をも懐柔し、上手く行くかと思ったところで後ろから刺されたような格好だが、他社でMBOを考えている経営陣の中には、この件に肝を冷やした取締役も決して皆無ではないだろう。

 世間はMBOには随分と目を光らせている。シャルレ事件ほど露骨にやらずとも、多少の疑わしい行為さえも揚げ足を取られるリスクは常にある。

 多くのMBOにおいて、経営陣が身銭を切るのは買収資金の内の一部である。後はファンドや金融機関の金だ。もっと言うと、借入を起こすとしても買収対象会社の資産を担保としたノンリコースファイナンスがほとんどだ。

 下手を打って個人で損害賠償を支払うより、あるいは、万一応募が足りない等の理由でMBOが不調に終わるよりは、所詮は他人の金である買収資金で多少プレミアムの上乗せをしてでも安全に買付を行う方がマシだと考えたいのが人の心のような気もする。そしてこれは株主の利益と相反するものでもない。

 近年のMBOを見ていると、プレスリリースで万全に万全を期し身の潔白を主張した上でなお多少の訴訟は織り込み済みと言う感の、経営陣の肩身の狭さが透けて見えるようにも思われる。いずれにしてもMBOを行うことを一度公表した以上、経営陣がMBOを成功させたいことは否定のしようがない。それどころか頓挫した場合に非難された前例もある。MBOに対する世間の厳しい見方を重々承知した上で、それでも果敢にMBOを行う経営陣の立場というのは、果たしてそんなに強いものだろうか。

 構造的に弱い立場の株主の保護が進んだ結果立場は逆転し、今やMBOは経営陣が一方的に有利な取引であるとは言い切れないのではないか。

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