米国の実態は…

しかし、次のグラフをご覧いただきたい。これは、1980年以降米国で新規上場した企業のうち、上場時になんらかの形でデュアルクラス構造を採用している会社の比率である。

米国における新規上場社数に対するDual-Class構造導入社数の割合
(左軸:Dual Class比率 右軸:IPO社数) 

出所:「IPO data」Jay R. Ritter Joseph B. Cordell Eminent Scholar Chair University of Floridaよりイグナイト作成

このデータによれば、テック企業のIPOにおけるデュアルクラスの割合は20%~30%、非テック企業のIPOでも15%~20%まで高まっている。これは単年度で比率を出しているため、IPO社数が少ない年は比率が高く算定される点などの留意が必要だ。しかし、筆者の推計では累計で見ても米国の上場企業のおよそ8~10%程度がなんらかの形でデュアルクラス構造を採用している。

今を時めく銘柄が目白押しのデュアルクラス企業

デュアルクラスといえば、識者がまず思い浮かべるのは、米Alphabet (以下、グーグル)や米Facebook(以下、フェイスブック)だろう。グーグルは創業者のLarry Page氏とSergey Brin氏及び一部の経営陣で議決権の約58%を確保している。一方、Facebookでは創業者のMark Zuckerberg氏が、委任された議決権も含め、やはり約58%の議決権を確保している。

だから、いくら世間が両社の独善的な経営を非難しても、少なくともコーポレートガバナンス(株主統治)の観点で彼らにブレーキをかけることは難しい。

例えば個人情報の問題が明るみに出たフェイスブック。最近の株主総会で、外部株主からこのいびつな資本構造を解消すべきという株主提案がなされた。これに外部株主の実に83%が賛成している。言うまでもなくこの提案は、同社会長兼CEOのザッカーバーグ氏個人により否決されている。

まさに「金は出せ、口は出すな。儲けさせてやるから」というところか。経済産業省お気に入りの「コーポレートガバナンスコード」に照らせば、完全に「0点」だ。

米国の機関投資家も、パーカーにジーンズで時価総額60兆円企業の6割の議決権を握る35歳の男の首になんとか縄をつけようと躍起になっている。しかし、そうした努力は徒労に終わるだろう。同様の構造を持つ他のテック系スタートアップも同様だ。Box、Linkdin、Lyft、GoPro、Zyngaなど、デュアルクラス構造を採用して上場しているテック企業は、今を時めくキラキラ銘柄が目白押しだ。

(この項続く)

文:西澤 龍(イグナイトキャピタルパートナーズ 代表取締役)