ザ・粉飾 暗闘オリンパス事件|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

ザ・粉飾 暗闘オリンパス事件 山口 義正 著(講談社+α文庫)

2011年に発覚したオリンパスの巨額粉飾決算事件の顛末を描くノンフィクション作品だ。最初に断っておくが、これは「経済ノンフィクション」ではない。フリージャーナリストの著者が内部通報者から情報を得て、総合情報誌「FACTA(ファクタ)」で第1報を書き、その後の報道合戦やオリンパス広報との攻防を描いた「報道ノンフィクション」である。

ザ・粉飾 暗闘オリンパス事件

本書から企業のコンプライアンスやコーポレートガバナンスについての知見を得ようとすれば、期待はずれに終わるだろう。

わが国の「報道ノンフィクション」は朝日・毎日・読売に代表される大新聞や共同・時事などの大手通信社、NHKや在京民放テレビ局といった大マスコミの動きを取り上げたものが多い。

最近では安倍政権を追い詰めた「週刊文春」編集部が注目されているが、こうした雑誌報道を支えるのが、著者のようなフリージャーナリストだ。

彼らの動きは大マスコミの記者と違い、あまり知られていない。このところ社会を動かす大スクープを連発するフリージャーナリストの活躍を知るには最良の一冊だろう。

フリージャーナリストが、いかに端緒をつかみ、誰と情報交換し、事件を把握して記事にしていくか…著者自身のオリンパス取材を紹介することで、その全体像が明らかになる。

「あとがき」で著者はオリンパスが上場廃止にならなかったことや、大手金融機関が事件の公表を迫って解任されたウッドフォード元社長のプロキシーファイトに協力しなかったことなどを挙げ、「正義」を失った日本社会への警鐘を鳴らす。

著者は事件の真相究明と正常化を求めるウッドフォード元社長に対してオリンパスの旧経営トップが「君は日本のことがわかってない」と拒絶したことを、「日本人の体質や思考法を指すのではなかろうか」と危惧している。

しかし、旧経営トップや結果的に追及の手を緩めた東証や金融機関、行政にとっては、何もかも明らかにして上場を廃止しオリンパスが完全に崩壊することで、証券市場や株主、従業員が困窮することを何としても阻止することが、彼らにとっての「正義」だったのかもしれない。

著者の第1報を世に送り出した阿部重夫FACTA編集主幹の「ジャーナリズムに賢(さか)しらな正義はいらない。ザッへ(出来事)に肉薄するのみ」(「あとがき」より)との言葉が、なんとも重い。それがジャーナリズムの「役割」であると同時に「限界」でもあるからだ。(2016年8月発売)

文:M&A Online編集部

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