3-4.”被取得企業の株主”の会計処理

基本の仕訳

被取得企業の株主は、「事業分離等に関する会計基準」及び「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」に準拠して仕訳を行います。また、それらに定めのない取引については「金融商品に関する会計基準」等に準拠することとなります。

被取得企業の株主の会計処理にあたっては、まず最初に「取引前後で投資が継続しているか」、「投資が清算されたか」の判定を行います。

判定は、
・「企業結合の対価が株式と同質なものか」「現金や不動産等の異質なものか」という”対価”の観点と、
・企業結合の結果、取得企業が「子会社・関連会社・その他の3分類に変動が生じるか」という”カテゴリの変化”の観点に応じて行います。

株式交換の場合、対価は株式であるので「同質」です。従って、対価の観点からは投資が継続しています。しかし対象会社(被取得企業)のカテゴリが変化するかどうかによって、投資が継続しているかは異なる結果となります。

投資が継続していると認定される場合交換対象となった株式の簿価をそのまま引き継ぐため「仕訳なし」
投資が清算されたと認定される場合交換対象となった株式の消滅を認識し、新たに交付された株式を時価で計上し、両者の差額を「交換損益」として認識します

a.カテゴリが変動しない場合

子会社株式が子会社株式のままである場合、関連会社株式が関連会社株式のままである場合、その他有価証券がその他有価証券のままである場合は、投資が継続していると判定されます。その結果、個別会計上は従前の簿価を引き継ぐため、仕訳なしとなります。

(仕訳なし)

b.子会社が関連会社となる場合

投資が継続していると判定されます。その結果、個別会計上は従前の簿価を引き継ぐため、仕訳なしとなります。

(仕訳なし)

c.子会社がその他有価証券となる場合

投資が清算されたと判定されます。その結果、個別会計上は交換対象となった株式の消滅を認識し、新たに交付された株式を時価で計上し、両者の差額を株式交換差益として認識します。

(設例5)
・I社の100%子会社であるJ社は小規模な企業であるが特殊な技術を保有していることから、グローバルな優良上場会社であるK社から株式交換による買収を提案され、I社はこれを承諾した。
・この結果、I社はK社の発行済み株式の5,000分の一に相当するK社株式を受け取った。
株式交換日におけるK社の時価総額の5,000分の一は1,200百万円、株式交換直前のJ社株式の簿価は900百万円であった。

(設例5の会計処理)
子会社株式がその他有価証券となる場合に該当しますので、投資が清算されたと判定し、受け取った株式を時価で認識し、交換した株式の消滅を認識し、差額を交換損益として計上します。

(借方) その他有価証券 1,200百万円
(貸方) 子会社株式 900百万円
交換損益 300百万円

d.関係会社が子会社となる場合

投資が継続していると判定されます。その結果、個別会計上は従前の簿価を引き継ぐため、仕訳なしとなります。

(仕訳なし)

e.関係会社がその他有価証券となる場合

投資が清算されたと判定されます。その結果、個別会計上は交換対象となった株式の消滅を認識し、新たに交付された株式を時価で計上し、両者の差額を株式交換差益として認識します。

f.その他有価証券が関係会社・子会社となる場合

この場合は投資が継続していると判定されます。その結果、個別会計上は従前の簿価を引き継ぐため、仕訳なしとなります。

(仕訳なし)

以上が株式交換の仕訳となります。(次回「株式移転のM&A仕訳」に続きます)

文:岡 咲(公認会計士)/編集:M&A Online編集部

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