経営者が会社を手放すというのは、例外なく淋しいものである。会社の行く末や社員を心配する気持ちも手伝って、一度は売ると決めても、「やはり売らないほうがよいのではないか」と迷いが生じるのが普通である。

しかし当事者である売主の経営者がいつまでも迷っていてはまとまる交渉もまとまらない。こうした堂々巡りになってしまった場合、どうしたらよいだろうか。

大事なことは、「そもそもなぜ会社を手放すことを考えたのか」という原点にいちど戻って、「会社を手放して自分は今後どう生きていきたいのか」を考えることだ。

M&Aは結婚に似ている。100%完ぺきなお相手を望んでいるといつまでたってもゴールインはできない。

売り手五訓

一. 売り時を逃すな!

もったいないと思うぐらいの時が「売り時」としてちょうど良い。手放すのが惜しいと思える会社だからこそ買い手がつくのだ。

二. 最終的にはトップの決断だ!

家族や役員に意見を求めても様々な意見が出て往々にして「船頭多くして…」という結果となる。トップの決断であれば皆尊重してくれるものである。

三. 常に企業価値を意識せよ!

魅力のない会社に買い手は現れない。日頃より企業価値を意識した経営をし、相手が欲する会社にしておくことが肝要である。

四. 売却条件の優先順位を明確にせよ!

M&Aは相手がある話である以上すべての要求が通ることはない。条件に優先順位をつけ、相手に歩み寄ることも必要である。

五. 第二の人生設計を明確に描け!

売却後の豊かなセカンドライフを楽しめるのは創業経営者に与えられた特権である。衆目を気にかけずその特権を堂々と享受すべきである。