新入社員:「概算取得費」とはどんなものでしょうか?
先生:「概算取得費」とは、実際にどのような価格で取得したかは別として、このくらいの価格で取得したのではないかと、概算で“みなす”価格です。
新入社員:どういうケースで使われるのですか?
先生:まず、取得した価格が分からない場合です。例えば、先祖から代々受け継いできた土地などで使用されることが多いです。
新入社員:確かに、先祖伝来の土地はいくらで取得したかなど、分かりませんね。どのように計算するのですか?
先生:「概算取得費」は、譲渡価額の5%で計算します。例えば、1億円で譲渡された土地は、500万円で取得したとみなします。
新入社員:ずいぶん、安い気もします。
先生:ただ、例えば1億円で売れた土地も、実は明治の頃に2円ほどで取得したものだったとしたらどうでしょう?
新入社員:たったの2円ですか!そう聞くと、500万円でも高いですね。
先生:概算取得費は、実際には取得した価格が分かっていても、譲渡所得税の節税効果を狙って使われることもあります。
新入社員:どういうことでしょう?
先生:土地や株式などを譲渡した時に得た利益に対してかかる譲渡所得税は、譲渡価額から取得価額を差し引いた金額を「譲渡所得」として課税対象とします。ですから、取得価額の金額が大きければ大きいほど課税対象額が低くなり税金も安くなります。
新入社員:実際には「1億円-2円=9999万9998円」が課税対象になるはずが、「概算取得費」を使うと、1億円-500万円=9500万円が課税対象になるということですね。
先生:その通りです。株式の場合も応用できます。資本金は1000万円で始めた会社の株式が、経営努力によって4億円で売却できたとしたらどうでしょう?
新入社員:この場合の「概算取得費」は、4億円×5%=2000万円ですね。となると、実際の取得価額1000万円より金額が大きいので、税金を払うときに「概算取得費」を使った方がお得ですね。
先生:このように、「概算取得費」を使うことで節税になることもあります。ぜひ覚えておいてください。
回答者:畑中 孝介(税理士)/文:M&A Online編集部
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