キリンビールと共同で行った資本構成の変更

小岩井乳業はキリンビールの出資を受け、小岩井ブランドの乳製品を全国展開したが、そのままの経営状態での成長は厳しくなる時期を迎えた。そのキリンビールを擁するキリンホールディングス(HD)は2010年、厳しさが増す小岩井乳業の経営に対して大鉈を振るう。

その手法はこうだ。当時、キリンHDのグループ会社であるキリンビバレッジが所有していた小岩井乳業の全株式をキリンHDが取得し、さらに小岩井乳業の第三者割当増資を引き受け、小岩井乳業をキリンHD直轄の子会社としたのである。さらに小岩井乳業は2007年にキリンビバレッジに譲渡したチルド飲料事業のうち、東京工場チルド飲料製造事業を新設分割し、その全株式をキリンビバレッジが取得することとした(小岩井乳業ニュースリリース、2010年9月28日参考)。

一連のスキーム変更によって、小岩井乳業は「こうした資本構成の変更と財務体質の強化をベースに、小岩井乳業はこれまで以上に乳事業に特化し、事業基盤の強化を図る」としている。小岩井農場を運営する小岩井農牧としても、より小岩井農牧の専業事業に経営を特化・集中していくことになる。

もちろん、こうしたスキームの変更は「小岩井農場の産業遺産を後世に伝承する」ことを第一の目的として行ったものではないだろう。だが、産業遺産が生む文化を後世に伝えるため、その「保存運営会社」としては必要な経営戦略である。国や県が買い取り、管理するだけではなく、その遺産で稼ぐ視点が必要で、それを可能にする経営が重要になってくる。

産業遺産がただの“廃墟”になるか、文化伝承の起点として生きた遺産となるか、この岐路にあって小岩井農場・小岩井乳業の経営戦略は1つの参考例になるように思う。

文:M&A online編集部