個人向け業務については、富裕層を対象としてプライベートバンキングに乗り出しましたが、わずか4年で撤退した苦い過去があります。2012年に、都内(丸の内、赤坂、広尾)や横浜、名古屋、大阪にあった6店舗(HSBCプレミア)をすべて閉鎖し、プライベートバンキングの世界的大手、クレディ・スイス(スイス)に事業を売却したのです。1400兆円にのぼる日本の個人金融資産をターゲットにしたものの、リーマンショックによる金融危機と時期が重なるという不運もありました。
投資銀行業務の一つ、日本企業が関連するM&Aのアドバイザー業務について、とくに目立つような実績はないようです。調査会社トムソン・ロイターがまとめている「日本企業関連M&A市場リーグテーブル」(上位25社)の過去5年をみても、HSBCの名前は見当たらず、圏外となっています。
ライバル関係にある同じく英国のバークレイズはしばしば名前を連ねています。HSBCのこれまでの日本とのかかわりの深さを考えれば、物足りなさも覚えます。M&Aの分野で存在感を高めていくことが今後の課題といえるでしょう。
文:M&A Online編集部