豪雨で土砂崩れ「盛り土と知らなかった」で責任を回避できるか?

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土地所有者は土石流など土砂災害の責任をどこまで負うのか?(写真はイメージ)

熱海の雨量は「グレーゾーン」

静岡地裁平成4年3月24日の判決では、土砂災害発生時の降雨量が「過去の観測データにおいても数回あることが認められる」としたうえで、「本件事故の被災者の建物が多数所在していたことを考慮すると、本件柵板工土留は山の尾根下沿いの急斜面の土留として通常要すべき安全性を欠いており、瑕疵があったと判断せざるを得ない」と損害賠償責任を認めている。

「想定内の豪雨」であれば、安全対策を施していたとしても土砂崩れが発生した以上、その責任を負うべきだということだ。つまり、損害賠償責任を負うか負わないかは、土石流発生時の「雨量次第」となる可能性が高い。

土石流発生時の降雨量は熱海市網代での48時間雨量が321ミリに達し、7月の1カ月平年降雨量を上回った。これは損害賠償責任が認められた静岡地裁判決の229.5ミリと認められなかった427ミリの中間に当たり、訴訟になった場合は裁判所の判断が注目される。

もっとも、今回の土石流は一般市民にとっても「他人事」とは言えない。2020年3月に土地基本法が改正され、土地保有の意思の有無にかかわらず、相続人が管理責任を負う内容に改定された。

親が持っていた放棄地が雨で土砂崩れを起こし、他人の住宅に被害が発生した場合は相続人が損害賠償責任を負うことになる。死亡事故でも起こそうものなら、親の遺産のおかげで子が全財産を失うことにもなりかねない。土地の所有者や相続人は「知らなかった」では済まないのである。

文:M&A Online編集部

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