米英では活発な「敵対的買収」も日本では失敗する

――「敵対的買収」が敬遠されるのも日本特有でしょうか。

 敵対的買収は、欧州は別として米英では活発ですが、日本では成功は容易ではない現在の共通認識です。00年、村上ファンドが昭栄に対して日本初の敵対的TOBを仕掛けましたが失敗しました。その後、ライブドアやスティール・パートナーズなどが、さまざまな敵対的買収を試みましたが、失敗しています。

 特に印象的なのは、06年の王子製紙による北越製紙に対する敵対的買収です。自社のコート紙の設備が老朽化したため、王子製紙が目をつけたのが、北越製紙の保有する同様の設備でした。

 王子製紙としては、北越製紙を買収して設備を利用する方が、新規の設備投資よりもコストが低く、かつ、過剰生産を避けられるという効果を狙っていました。

 この買収案は、経済的合理性の観点からみれば、非常に理にかなっています。それにもかかわらず、北越製紙の従業員、労働組合などの反対を受け、買収は頓挫することになりました。

 王子製紙の例は、投資家や企業にとって明らかにプラスと思われる買収でさえ、敵対的である場合は成功しないということを示唆しています。

 もっとも、一連のアクティビズム(株式を利用した積極的な経営参画)と呼ばれる敵対的買収の動きは、株主の声を聞く必要のない経営環境(クワイエット・ライフ)を満喫していた保守的な経営者に対してはインパクトを与えました。

 しかし結局のところ、日本での敵対的買収は、被買収企業の従業員などによる非常に大きな反発から企業価値の上昇が生まれず、それどころか問題化することで市場評価が下がるといった現象につながることが分かったのです。

 このことは、日本ではマーケット・フォー・コーポレート・コントロール(経営権支配市場)が機能しないことの証明だという意見もあります。しかし私は、日本では友好的な関与、介入でなければ、プラスの効果を得られないということを学習するステップだったのではないかと思っています。

 なぜなら、これらの過程を経て、機関投資家を中心に「クワイエット・アクティビズム」、つまり「静かな」外部投資家の関与・介入が徐々に進むようになり、株主の影響力は着実に上昇しているからです。