――国内の中小企業では事業承継と相続がらみのM&A案件が増えています。そこで課題になっていることはありますか。

 日本社会の経済的な力を維持するためにも、中小企業の円満な事業承継は重要な課題になっています。しかし一方で、承継がうまく行かず、企業そのものの力を弱めてしまうような事態が頻発しています。

 相続がらみの事業承継で一番の課題は、少数株主の存在です。戦後の日本において、会社を興し発展させる過程で、自分の兄弟や親類に株を分け与えたケースはたくさんあります。出資の払込みまでしてあげて、実態としてはただで株を渡しているケースすら、少なからずあると思います。

 ところがその兄弟や親類も亡くなり、日ごろのつきあいもない息子や娘たちが親の株を相続する。税理士に相談したところ、「額面50円でも、とんでもない価値があります」と評価されて“その気”になるのです。

 創業者が配当をしつつも実直に内部留保を蓄え続けた結果、確かに、純資産ベースでも株価は巨額になっており、今さら、純資産で買い取ることもできないし、できても、もともとが「50円」ですので、買い取りたくもない。当然、売却を表明した親族との関係は悪化し、ひいては「何でも反対」や「現経営陣は不正をしている」になる。

 現経営陣が3分の2以上の議決権を持っていればよいのですが、そうでない場合は、増資や定款変更といった特別決議が通らない。株を配った結果、現経営陣がマイノリティである場合すらあり、そうなるともっと深刻です。親族の株も含めて買い取ってくれる先があれば話は解決しそうですが、こじれた親族関係の中では、そういう話をまとめるのは極めて難しい話です。こうした問題を円滑に解決するための仕組み作りは、日本経済という大きなレベルで見ても非常に重要性が高いのではないかと考えています。(了)

聞き手・文/M&A Online編集部

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