――PMIがきちっとできていない理由は、どのような点にあるとお考えですか。

 まず申し上げるとすれば、日本企業の経営者において、ビジネスを中長期的に予測し、それに対応していく力が弱いことにあるように思えます。もちろん、日本の多くの企業、特に上場企業は、中期経営計画を策定し、かつ公表しています。ただし、多くの会社の中計は数値計画が中心のものであり、その数値の前提となる事業の分析や、さらにその背景となる社会情勢の変化などについて、「なるほど」と思わせるような記述があるものは少ないように思えます。

 厳しいことを言えば、経営陣は、3年や5年といった、現在から比較的容易に想像できる近未来の、しかも予測なのか目標なのかわかならいような数値を中心とした計画をもって満足するのではなく、大げさに言えば地球規模のあらゆる情勢を取り込むようなマクロの視点に基づいて、10年、20年、あるいは50年といった真に中長期的な時間軸で、自らの事業の将来性や事業ポートフォリオの在り方を構想して、それを現在の経営判断にフィードバックすることが求められているのではないでしょうか。

「2、3年で投資資金を回収できる会社だから、10年やれば投資資金を上回る収益があるはずだ。だったらいいじゃないか」という判断もあるかとは思います。しかし10年も順調に利益を生み出してくれるビジネスは、そうそうあるものではありません。本当は、買った会社以前に、まず自社の将来予測がきちんとできていないのであれば、買った会社の将来予測などできるはずもないのですが。

 自社の将来予測すら満足にできていない会社が、他の会社の将来予測について非常に甘い認識の元にM&Aをやっていることが多い気がします。買って、一時的には連結収益に貢献をしたが、あっという間にお荷物になってしまうケースも、ずいぶんあります。(続く) 

聞き手・文/M&A Online編集部

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