4番目として赤字子会社の損失分担について検討する。日本基準では、債務超過子会社から生じる損失は少数株主持分に負担させず全額親会社負担とするが、IFRSでは、債務超過子会社からの損失も親会社・被支配株主持分に比例配分する。そのため、親会社の負担が相対的に軽くなる。このメリットの相対的な大きさは企業規模の大小よりも株主構成に依存するため、必ずしもドメスティック企業にとって相対的に大きいとは言えないものの、同様の株主構成のグローバル企業とドメスティック企業の比較においては、相対的に小規模のドメスティック企業により大きなメリットとなるであろう。

 最後に、退職給付債務の数理計算上の差異の取り扱いについて検討する。日本基準では、数理計算上の差異は発生時にはオフバランスとし、その後10年で償却され損益を通じて純資産に反映されるが、IFRSでは、発生した期に全額そのほかの包括損益を通じて純資産に反映される。この結果、数理計算上の差異償却額が損益計算から除外されるというメリットがある一方、数理計算上の差異の発生による純資産の変動が10倍のインパクトを生じることになるというデメリットがある。

 この点について、一般にはIFRS適用のデメリットの筆頭に挙げられる傾向があるが、これをいわばショック療法として、給付条件の変更や確定拠出年金(日本版401k)への転換を図る契機として利用することも考えられる。一方で、小規模な企業においては退職給付制度の企業負担が相対的に軽いケースも多く、IFRS適用のデメリットが相対的に小さいケースも考えられる。

以上のような考察を踏まえると、IFRSはドメスティック企業である自社には無縁と反射的に忌避せず、一度適用のメリットを検討する価値はあるのではないだろうか。

文:公認会計士・日本証券アナリスト協会検定会員:安室保宏
(ビバルコ・ジャパン レポート(Vol.37より)より転載)