投資ファンドは「1株1議決権」を前提として、株主権を存分に行使してリターンの最大化を目指す。ある意味、米国株主資本主義を究極まで純化した存在といえる。その投資ファンドが自らは一般株主の権利を著しく制限する特殊な議決権構造を採用しているのだ。
自動車部品大手のカルソニックカンセイはイタリアの同業大手マニエッティ・マレリを62億円ユーロ(約8060億円)で買収する。日本企業がかかわるM&A案件として今年2番目の規模。これを主導したのが米投資ファンドのKKRだ。
東芝は8月24日の経営会議で、半導体事業を8月中に売買契約締結するために、ウエスタンデジタル(WD)陣営と優先的に協議することを決めたと報じられています。いかにも東芝が自発的にWDと協議を始めるようなニュアンスですが、実際はかなり違っているはずです。
先週、PEファンドのKKRが全米最大の健康・医療情報サイト「WebMD」を28億ドルで買収するとの発表がありました。日本法人のWebMD Japanは2002年にエムスリーに売却され、現在は医療情報サイトm3.comの一部として運営されています。米上院がオバマケアの一部廃止法案を否決し、米国では自己健康管理の機運が高まっているようです。
投資ファンドの本分は「企業を安く買って高く売ること」だ。そのため、投資ファンドはM&A市場において、ときには「買い手」として、ときには「売り手」として登場頻度の多いプレイヤーでもある。活発な動きを見せる投資ファンドによるM&Aに注目したい。