2014年10月に、DeNAがperoli(Meryを運営)とiemoというWebメディアを買収しました。いずれも「キュレーションメディア」という分類のメディアです。買収元企業がDeNAという大企業であったことと、買収額が2社あわせて約50億円という高額であった等の理由で話題となりました。
この時期、高い採算性と買収によるイグジットの可能性への期待が高まり、DeNA以外にも多数のキュレーションメディアが乱立しました。そうしたメディアの開発にもRubyは使われています。流行りのサービスを素早く模倣するため、生産性が高いRubyを使ったのかもしれません。
しかしその後、ご存知の通りキュレーションメディアは「無断転載」や「内容に誤り」等の批判を受けるようになります。Mery、iemo、WELQ等のメディアは現在非公開となっていますが、こうしたモラルや遵法意識の欠如はRubyの特性ではなく、人間の特性であるとひとこと申し添えたいと思います。
少し古いニュースですが、2011年1月にセールスフォース・ドットコムがherokuを買収しました。以前からセールスフォースはクラウドサービスとして、基幹業務システムやポータルサイトなどを簡単に作れるforce.comというPaaSを既に提供していました。
PaaS(Platform as a Service)という言葉は聞き慣れないものかもしれません。厳密に説明すると長く複雑になりますが、ここでは「PaaSを使うと簡単な操作でソフトウェアやアプリケーションが作れる」という理解でよいと思います。
セールスフォースが従来提供していたforce.comには、大きな特徴があります。それはソフトウェア作成に独自言語・独自手法を用いるということでした。
一方でオープンな開発環境は日々進化し、開発者がより素早く、より安全に、ストレス少なく開発できるようになっています(ちなみにこれらを実現できる仕組みを「モダンな開発環境」と言うことが多いです)。Ruby等のオープンな言語は使用者が多く、それだけに進化のスピードも速いといえます。
おそらくforce.comは、独自言語を用いるデメリットが目立つようになり、このデメリットを埋めて「モダンな開発環境」を提供したいというのが、セールスフォースがherokuを買収した理由のひとつではないかと筆者は思います。
素早く安全にストレス少なく使えることは、利用企業の経営者にも開発者にも歓迎されるでしょう。またRuby, JavaScript, Java等の言語が使用可能であり、独自言語より開発がしやすくなっています。
モダンな開発環境に関連するニュースといえば、先日Oracle(オラクル)がWerckerを買収しました(米国時間2017/4/17)。Werckerは継続的インテグレーション(CI)ツールです。前述の「モダンな開発環境」には継続的インテグレーションが含まれます。このように「モダンな開発環境」導入の動きは大きなトレンドになると思われます。
注「継続的インテグレーション、CI(英: continuous integration)とは、主にプログラマーのアプリケーション作成時の品質改善や納期の短縮のための習慣のことである。特に、1990年代後半以降の開発においては、継続的インテグレーションをサポートするソフトウェアを使用する傾向が強まってきた。(以上、Wikipediaより引用)」
企業買収の視点からRubyについて説明しましたが、以下のような特徴を理解していただけたかと思います。
・Rubyは人気言語であり開発効率がよい。
・Rubyは世界的なトレンドである「モダンな開発環境」と親和性が高い。
とはいえこれはRubyの特徴の、表面のごく一端にすぎません。もしRubyに興味があればぜひ触ってみてください。2日間以上の学習時間を捻出できる方は、Ruby on Rails チュートリアル (https://railstutorial.jp/) をお勧めします。個人差はありますが、2日間で全14章中の最初の1章を習得できるのではないでしょうか。1章だけでもRailsの魅力に触れられるかと思いますので、ゴールデンウィークに挑戦してみてください。
文:鶏肋 /編集:M&A Online編集部