上場企業にも“見習い”が必要

 今でもIPOを夢見る人はたくさんいますし、ユニークな技術やアイデア、ビジネスモデルがあればベンチャーキャピタルが投資してくれる環境も整っています。

 しかし、私のIPO関連のセミナーに訪れる方の中には、上場希望と言いながら、事業計画書と損益計算書しか揃えていない経営者もやってきます。売上高と最終利益表のみという方もいました。ビジネスの基本的な“お作法”を身に付けないままにIPOを目指し、実際に勢いでこぎ着けてしまっているケースもあります。

 もちろん、IPOを目指す企業が増えるのは、日本経済の活性化には大きなプラスです。それこそが経済成長です。ただ一方でIPOとは、「縛りのある世界」への参入でもあります。企業統治や内部統制の体制を整えて世間に情報を開示し、株主に報いていかなければならない。

 そんな縛りのある世界にあえて入るのは、資金調達が容易になる利点があるからこそです。株主から得る資金は、極論すれば返さなくてもよい資金なのです。それを理解した上で、投資家に責任を果たし続けるという自覚がどこまであるのかが問われるのです。

 これは持論ですが、いきなり東証1部へのIPOは禁じるべきだと考えています。例えば社歴が10年以内ならばマザーズにしか上場できないこととし、最低でも3期は指定替えせず、情報開示や企業統治がきちんとできる仕組み整えてもらう。言わば上場企業のお作法を覚えてもらう研修期間のようなものです。

 行儀作法も分からない者がいきなり1部というのはさすがに無理があります。ゴールド免許は、過去5年以内に事故や違反がないドライバーにしか交付されないのと同じように、様子見の期間が必要です。東京証券取引所も、こうした対応を考える必要があるのではないでしょうか。(了)

■第1回:第1回:上場企業の推移で見えてくる世相とベンチャー企業の在り方
■第2回:株主構成と経営者の変更 より多様性が求められる企業継続の方法