「マージン・コール」(2011年)|一度は見ておきたい経済・金融映画&ドラマ<3>

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意思決定のスピード

ピーターが巨額損失の可能性を直属の上司に報告したのが22時過ぎ。そこから、その話は次々と会社の上層部へと伝わっていく。会社の命運がかかった重要事項であるということもあるが、2時ごろには各所の部長クラスとの話し合い、早朝にはCEOをも交えた重役会議で対策を決定するという意思決定の早さ。時間的なスピード感があるのにも関わらず、物事が静かに淡々と進んでいく様子は、これから起こるであろう嵐の前の静けさともいえる。

垣間見える資本主義の闇

平社員からトップまで投資銀行で働く様々な立場の人々が、危機的状況を前にどのようにふるまうのかがリアリティを伴って描かれている。いずれも資本主義という枠組みの中で金に翻弄される人間ばかりだ。若手社員でも年収25万ドルという高額報酬のせいか、上に行けば行くほど感情に流されずに冷徹に己の利益を追求している構図が興味深い。それが徹底できない者たちは課長、部長どまり。その中で、ケヴィン・スペイシー演じるサムは、ちょうど中間に位置しているといえる。重役たちの非情な決定にも倫理観を持って反発するが、金を前に結局抗えない。そんなサムの複雑な気持ちを集約したラストシーンに、人間の業の深さを感じずにはいられないはずだ。

文:M&A Online編集部

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