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深海潜水艇タイタン事故「経営者の突然死」にどう対応すべきか?

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事故を起こした深海潜水艇「タイタン」。犠牲者には企業経営者も(Photo By Reuters)

トップ選びが難航したら、第三者への事業承継も視野に

次に新社長を決めて、新しい経営体制を決める。株式会社の場合は取締役会による新社長の選任、代表取締役の変更登記、社長の名義変更などを済ませておく。これも時間との戦いで、もたつくと実際にそうでなくても「後継者争いが起こっている」との印象を社内外に与えるので注意したい。

中小企業の社長は金融機関の借り入れに当たって連帯保証人になっているケースも多い。故人に代わって新社長や相続人が連帯保証人となる手続も必要だ。さらに社長個人が担保を提供している場合も、その変更や登記が必要になる。

親族内承継の場合、後継者候補が取締役や社員として在籍していれば比較的スムーズに経営権の移行が可能だが、遺産相続が絡むケースもある。複数の親族が株式を保有している場合は、新経営者に株式を集約するための交渉や手続が必要だ。経営者が会社に貸し付けをしたまま死去した場合は、貸付金債権は相続財産として相続税が課税されるため、税務処理も必要となる。

最悪のケースは親族や社内に後継者がいない場合で、会社清算の可能性も。そうなれば相続人も清算処理に費用と手間がかかり、従業員は職を失い、取引先は業務に支障をきたす「三方悪し」に陥ってしまう。こうした最悪の事態を回避するためには第三者への事業承継、すなわちM&Aしかない。

残された遺族が経営に参加する意志がない場合も、第三者への事業承継が有効となる。遺族にとって簡単に売買できない非上場株の相続は厄介だからだ。第三者への事業承継であれば、買い手は企業なのでスムーズに売買が成立する。承継の意志がない遺族の場合、オーナー経営者に比べれば相続した企業への思い入れは小さいので、買い手企業にとっても迅速にM&Aできるというメリットもある。

相続人は会社売却で相続資産が増え、従業員の雇用は維持され、取引先もこれまで通りの取引が維持されるという「三方良し」となるのだ。M&A仲介大手ストライクの荒井邦彦社長は「社長の急死に伴う第三者への事業承継にも対応している。困ったらぜひ相談してほしい」と話す。経営者の急死という悲劇に巻き込まれたら、M&Aという選択肢も考慮に入れておくべきだろう。

文:M&A Online

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