上場企業の海外M&Aが2023年、急回復を遂げた。年間件数(適時開示ベース)は216件と前年比60件の大幅増となり、2016年(207件)以来7年ぶりに200件台に乗せた。
2023年11月のM&A件数(適時開示ベース)は前年比25件増の114件と今年の月間最多となった。1~11月累計は946件と前年を81件上回り、年間件数はリーマンショック前年の2007年以来16年ぶりに1000件の大台に乗せる見通しだ。
2023年10月のM&A件数(適時開示ベース)は85件と前年を2件上回った。9月は7カ月ぶりに前年比マイナスとなったが、ひと月で増勢を取り戻した。一方、取引金額は2143億円にとどまり、今年3番目の低水準だった。
広告代理店首位の電通グループがコロナ禍の中、高水準のM&Aを維持している。同社は2023年(1-9月)に5件のM&Aを適時開示しており、コロナ禍の影響が出始めた2020年からM&Aの適時開示件数は15件に達した。
2023年9月のM&A件数(適時開示ベース)は77件と前年を28件下回り、7カ月ぶりに前年比マイナスとなった。前年は14年半ぶりに月間100件を超える高水準だったことから、反動減の影響が出た形だが、前月比でも18件減とペースダウンが否めない。
2023年8月のM&A件数(適時開示ベース)は前年を22件上回る95件と、3月(105件)に次ぐ今年2番目の高水準だった。前年比プラスは6カ月連続で、国内、海外案件がいずれも好調を維持した。1~8月累計は670件と前年を82件、率にして14%上回るハイペースで推移している。
2023年7月のM&A件数(適時開示ベース)は74件と前年を17件上回った。前年比プラスは5カ月連続で、国内、海外案件とも堅調に推移した。取引金額は1566億円と低調だった。5~6月は2カ月連続で1兆円を超えたが、大型案件が乏しかった。
日本企業がかかわる海外M&Aが回復を遂げている。2023年上期(1~6月)の海外M&Aは前年を3割上回る94件で、コロナ前の2019年(上期、89件)を超えた。日本企業が買い手となるアウトバウント取引が復調が目立つ。一方、外国企業が買い手(日本企業が売り手)に回るインバウンド取引はコロナ禍以降、高止まり傾向が続いている。
2023年6月のM&A件数は前年より1件多い74件だった。前年比プラスは4カ月連続。一方、取引金額は1兆1444億円。JSRが官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)による買収提案を受け入れる案件が約9000億円に上った。
コロナ禍で落ち込んでいた海外M&Aの件数が2023年、好調な滑り出しを見せている。1~2月累計(適時開示ベース)は前年同期比10件増の32件で、コロナ前の2019年34件にほぼ並んだ。ただ、その内容は4年前と一変している。日本企業が買い手のアウトバウンド取引が減る一方、外国企業が買い手のインバウンド取引のウエートが急上昇しているのだ。