【業界研究】テレビ局のM&A、最新動向から今後の見通しを解説

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テレビ局がM&Aを活発化させています。アニメ制作会社をはじめ、EC関連企業など様々な会社を傘下に収めるテレビ局で今、何が起きているのでしょうか。ここでは、テレビ局のM&A傾向と今後の見通し、さらにM&Aで求められる案件の傾向などを解説します。テレビ局のM&Aに詳しいストライク成長戦略部シニアアドバイザー長谷川奨氏の見解をまとめました。

【監修】株式会社ストライク 成長戦略部 第一チーム シニアアドバイザー 長谷川奨
同志社大学卒業後、ベンチャー企業を経て、ストライクに入社。M&Aコンサルタントとして、大手、ベンチャー企業の案件を複数社成約に導く。全国のテレビ局のM&A担当者とのリレーションのほか、テレビ局のM&Aの実績も持つ。



テレビ局が積極的にM&Aに取り組む理由

テレビ局のM&Aに対する姿勢は、コロナ禍の影響を大きく受けた2020年頃を境に大きく変化しました。YouTubeやNetflixなどの動画配信プラットフォームの台頭で、テレビの視聴時間が減少していたところに、2020年からコロナ禍に突入。広告収入が大幅に減少し、危機感が一気に高まったからです。そうした傾向は、総務省の情報通信白書などの調査でもはっきりと数値になって表れており、テレビ局はそれまで以上に積極的にM&Aに取り組むようになっています。

この先も、Netflixなど動画配信プラットフォームの存在感は増すと予測されます。環境が変化する中で、放送ビジネスを展開し続けるには、コンテンツ領域にとどまらず、ECやイベントなどを事業に取り入れ、新たな価値提供をせねばならないとの強い危機感があります。テレビ局は今、まさに過渡期にあるのです。

テレビ局が手掛けるM&A案件

テレビ局のM&A対象企業は、主にIP(知的財産)・アニメ制作会社、EC(電子商取引)、非放送分野の3つに分けて考えられます。

①IP・アニメ制作会社
漫画やアニメなどのIPはテレビ局のM&Aでの軸です。IPを生むアニメ制作会社も同様です。IPは電波での放送・ネットでの配信から、グッズの販売、出版、映画・ドラマ化、イベント開催による収益化、海外展開など、放送・配信を起点にビジネスの連鎖が見込め、いわゆる“バリューチェーン(価値連鎖)”でビジネスを拡大できます。こうした背景などから、IP・アニメ制作会社には常に目を向けています。

②EC(無店舗小売り)
EC(電子商取引)も、頻繁にM&Aの対象となります。高い集客力を持つテレビ放送と、ECの組み合わせでの収益向上が業界共通のトレンドです。通販番組での商品企画・開発会社から、食品、スポーツ用品、アパレル、電化製品、インテリア雑貨などBtoCに該当するさまざまなECサイトの運営会社などがM&Aの対象となります。

③非放送分野
非放送分野のM&Aも多数あります。日本テレビホールディングスによる総合スポーツクラブ事業を営むティップネスの買収(2014年)、TBSホールディングスによる個別指導塾「スクールIE」運営元のやる気スイッチグループホールディングスの買収(2023年)などが例として挙げられます。前者は顧客とのリアルな接点の場・機会を得て、コンテンツ開発などにつなげることを意図しており、後者については、新たな映像コンテンツ教材の開発を目的としたシナジーを見込んでいます。

テレビ局のM&A今後の見通し

テレビ局はM&A資金を豊富に持ち、ビジネス環境の危機感から、今後もM&Aを活発に続けることが予測されます。

IPは引き続き注目のM&A対象であり、人気が高いコンテンツ(知的財産)を保有する会社ほど魅力的な投資対象となります。

それ以外のECや非放送分野では、留意点があります。それは同業種の企業をいくつもM&A対象とすることは想定しづらいことです。たとえば、インテリアを扱うECサイト運営会社を傘下に収めたならば、同様の企業には目が向かないと想定されます。いわば、1つだけの空席を巡って、早い者勝ちともいえる状況が想定されているわけです。

【テレビ局担当者が明かす業界動向、M&A戦略(動画)】
「テレビ局が描く成長戦略とは」(前編) "メディアの王様"の現在地
「テレビ局が描く成長戦略とは」(後編) メディアの将来とパートナーに求める条件

譲渡企業のメリットは?

テレビ局の傘下に入ることで、財務管理や労務管理などをはじめ、高い基準でのコンプライアンスが求められるようになりますが、メリットは多分にあります。テレビ局の集客力を活用して、商品やサービスを幅広く展開できます。また、スタートアップアップは成長過程で多額の資金が必要となり、「死の谷」と呼ばれる障壁に突き当たることがありますが、傘下に入ることで事業に専念できる環境が整います。

最後に、テレビ局は資金力が豊富でありながら、M&Aの対象も広いのが特徴です。そのなかで各社の傾向は多少なりとも異なります。より詳細な情報を得たい場合は、専門家に相談してみることも一つの手です。

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