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「軍配」どちらに? 経営対立の積水ハウスがあす株主総会

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積水ハウスが本社を置く梅田スカイビルタワー(大阪市)、左は株主総会開催を当初予定していたホテル

会社提案か、それとも株主提案か。現会長と前会長の経営対立に揺れる積水ハウスは23日、大阪市内で定時株主総会を開く。会社側、株主側の双方がそれぞれ取締役候補者の選任について賛否を問う。株主提案に軍配が上がれば、阿部俊則会長ら現経営陣は一掃され、前会長の和田勇氏が2年ぶりに経営に復帰する。決戦の行方は?

コロナで開催場所を変更

1月期決算の積水ハウスは毎年4月下旬に大阪市内で株主総会を開いているが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた「緊急事態宣言」の最中での開催とあって、ひと騒動があった。

予定していたホテルから場所の提供が困難との通知があったとして、開催場所を変更。その際、感染リスクを低減するために参加株主の人数制限もあり得るとしたことから、株主提案側が総会の延期を求めて大阪地裁に仮処分を申請する事態(4月21日に申し立ての一部取り下げおよび却下決定)にもなった。

今回の株主総会における議案は8つあり、このうちの一つが株主提案(第8号議案)。積水ハウスの和田勇元会長と現職の勝呂文康取締役は2月半ば、自身の取締役就任を含む11人の取締役候補者の選任を内容とする株主提案を会社側に突き付けた。東京都内の土地取引に絡み、約55億円の損害が発生した詐欺被害事件(いわゆる地面師事件)の責任を問うとして、経営陣の刷新を求めたのだ。

2年前、解任動議で応酬

事は2年前にさかのぼる。当時会長だった和田氏と社長の阿部氏(現会長)との間で土地取引詐欺事件の責任の所在をめぐって権力闘争が勃発。2018年1月の取締役会で和田氏は事実上解任され、10年間社長を務めた阿部氏が会長に就いた。この時の取締役会では和田氏と阿部氏の双方が解任動議で応酬する激闘だった。

その再来ともなるのが今回の株主総会だ。なぜ、2年後になったのかといえば、積水ハウスの取締役任期が2年で、株主総会をもって任期満了となるのを見計らったものとみられる。もっとも、取締役任期については今回、1年に短縮することを第2号議案(定款一部変更)に盛り込んでいる。

和田前会長ら株主側は、阿部会長、稲垣士郎副会長ら4代表取締役を中心とする現経営陣が不適任とする理由として、多額損害が発生した土地取引は単なる詐欺被害事件ではなく「不正取引」であるとし、これに関連して重要情報の隠蔽、ガバナンス不全があったことをあげている。

会社側は、会社提案が企業価値と株主共同の利益向上の観点から、最良の選択肢であるとして、株主提案の11人の候補者全員に反対。実際、2020年1月期は売上高11.8%増の2兆4150億円、営業利益8.5%増の2052億円と過去最高業績を達成した。

議決権助言会社は“大勢”として会社を支持

会社側、株主側の取締役候補者に対する議決権助言会社の賛否はどうなのか。最有力の米ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシズ)は会社提案の取締役候補12人の選任(第3号議案)うち、阿部会長と稲垣副会長の2氏について「反対」、その他10人は「賛成」を推奨する。

一方、株主提案の11人の取締役選任には和田元会長、勝呂現取締役を含む9人について「反対」を推奨し、「賛成」はクリストファー・D・ブレイディ、岩﨑二郎の2氏にとどまる。

積水ハウスの株主構成は外国人が約30%を占め、個人株主は14%程度。残りは機関投資家、金融機関などの法人筋。委任状はどちらの陣営に流れたのか。株主提案側が思いのほか善戦中とも伝えらえる。2年を経て、いよいよ雌雄を決する時を迎えた。

◎第3号議案(会社提案、取締役12人選任の件)

氏名(※は新任) 積水ハウスにおける地位
阿部 俊則 代表取締役会長
稲垣 士郎 代表取締役副会長
仲井 嘉浩 代表取締役社長
内田 隆 代表取締役副社長
涌井 史郎 社外取締役(東京都市大学特別教授)
吉丸 由紀子 社外取締役(三井化学社外取締役)
北沢 利文(※) (東京海上日動火災保険副会長)
田中 聡(※) (クラレ社外取締役)
西田 勲平 取締役専務執行役員
堀内 容介 取締役専務執行役員
三浦 敏治 取締役専務執行役員
石井 徹(※) 専務執行役員

◎第8号議案(株主提案、取締役11人選任の件)

氏名 略歴など
クリストファー・D・ブレイディ チャート・グループおよびチャート・ナショナル会長兼CEO
パメラ・F・ジェイコブズ スパウティング・ロック・アセット・マネジメント チーフ・サスティナビリティ・オフィサー
岡田 康司 地域経済総合研究所理事長
佐伯 照道 北浜法律事務所・外国法共同事業パートナー
岩﨑 二郎 ルネサスエレクトロニクス社外取締役
齊藤 誠 弁護士法人斉藤法律事務所代表社員
加藤 ひとみ ファリア合同会社代表社員
勝呂 文康 積水ハウス取締役 専務執行役員
藤原 元彦 タカマツハウス社長
山田 浩司 NORTH AMERICA SEKISUI  HOUSE,LLC CEO(2019年まで)
和田 勇 積水ハウス代表取締役会長兼CEO(2018年まで)

文:M&A Online編集部