――なるほど、因数分解して考えるとわかりやすいですね。マーケティング以外ではどんな活用法がありますか。
ファイナンスにも活用できます。事業計画の立案や、他社への投資・M&Aを検討する際に企業価値を算定をするのにも役立ちます。
例えば、あなたが上場準備会社の経営企画部の担当者で、社長から「ベストケース、通常、ワーストケースに分けて事業計画を立て、自社の企業価値を算定してほしい」と言われたとします。通常はそれぞれのケースごとにシートを作成して前提条件、計算をまとめて書くのが一般的だと思われます。
しかし、多くのシートを作成すると間違いが起こりやすく、何より手間がかかります。売り上げ5%増となる事業計画をつくった矢先に社長から「10%増にしたらどうなるか」などと言われたら、どんどんシートが増えていき、非効率です。
こうした事態を回避するためには役割ごとのシートをつくるのがおすすめです。
<シート構成の例>
まずインプットシートには事業計画の計算の基礎となるデータを書き込みます。次にアサンプションシートは変更したい変数・前提をまとめて書きます。最終結果であるアウトプットシートでは、計算結果を出力するだけで、数値の入力はしません。
このように役割ごとにシートを分けることによって、どこに何を入力するのか、しないのかが明確になり、ミスを減らせます。また社長から「前提を変えるとどうなるか」と聞かれても、アサンプションシートの数字のみを変更するだけで簡単に試算できます。
ーーそれはいいアイデアですね。それぞれのシートをどんな風につくればよいか詳しく教えてください。
インプットシートはもともとの材料としてある数値を入れます。事業計画の場合、過去の売上高や利益などの損益計算書項目を入力します。また不変変数シートには、法人税率など、変わらない変数を書いておきます。
アサンプションシートは未来の計画や前提を示したものです。例えば複数の事業部がある会社では事業部ごとの成長率などを入力します。楽観ケース、通常、悲観ケースなどに場合分けして前提を書くと管理するのに便利です。
<アサンプションシートの例>
アウトプットシートは計算結果を出力するシートです。数値を入力することはありません。アサンプションシートで選択された前提を基に結果を計算します。どこの変数をどう変えると、結果がどう変わるかを示してくれます。
<アウトプットシートの例>