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ストライク、「診療所や病院の事業承継」セミナー開催

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写真左から、ストライクの箕浦悠コンサルティング本部 ヘルスケアチーム チームリーダー、メディカルプラスの神子誠コンサルティング営業本部 医院継承第1事業部部長

ストライク<6196>は、「診療所と病院の事業承継」をテーマにしたセミナーを開催した。クリニック(診療所)と病院の第三者承継の概要・事例を紹介したセミナーで、医科・歯科診療所の第三者承継を専門に扱うメディカルプラスの神子誠コンサルティング営業本部 医院継承第1事業部部長がクリニックについて、ストライクの箕浦悠コンサルティング本部 ヘルスケアチーム チームリーダーが病院について解説した。

クリニックの後継者問題

セミナーでは神子氏がクリニックの現状と課題について解説。厚生労働省の令和3年資料を持ち出し、全国で8万5352件のクリニック(法人・個人)のうち、1年で4464件が廃止・休止になったと指摘。その理由として、クリニック院長の平均年齢は2010年の58.3歳から2020年に60.2歳(令和2年厚生労働省資料)に上昇し、世代交代が順調に進んでいないと指摘した。

第三者承継のプロセスと譲渡価格の決定法

次に第三者承継のプロセスを検討、交渉、契約の3つのフェーズを経て最終譲渡契約に至ると解説。検討フェーズでは、個別相談後、秘密保持契約、業務委託契約を締結し、募集資料を作成する。交渉フェーズでは、募集を開始してから、買い手希望者とのマッチングを行い、売り手と買い手のトップ面談で双方の相性確認と現地見学を行い、譲渡価格などの条件交渉を行う。契約フェーズでは双方の認識や意思が一致していることを書面にした基本合意契約を締結し、1~2カ月をかけて買収監査を行い最終譲渡契約を締結、その後に引継ぎフェーズに入る。

クリニックM&Aの流れ
クリニック第三者承継の流れ。メディカルプラスは成約までの期間が6.9カ月(中央値)とスピード感のあるサポートが可能だという(セミナー資料より)

譲渡価格の決定方法は、個人クリニックに焦点を当て、什器、医療機器などの有形資産と営業権(のれん代)の合計額になると説明。さらにのれん代は、属人的な経費を除外した「実質利益」、診療科目や患者層の「診療実態」、所在地、人口動態、交通の利便性、事業の自律性など「その他の要素」の3要素から算出する。

個人クリニックの譲渡価格の決定方法(セミナー資料より)

次にメリット・デメリットについて。メリットでは売り手に廃院コストや手間がかからないこと、地域医療の継続などがあり、買い手には既存の顧客基盤、初期コストの抑制、ノウハウやブランド力の引継ぎ、資金調達のスムーズさなどがあるとした。デメリットでは売り手に後継者の経営方針の転換による現場混乱の可能性などを挙げ、買い手には買収費用としての営業権の発生や買収後の法的な問題や訴訟リスクなどがあると提示した。

クリニックの第三者承継事例

神子氏は最後に、第三者承継の実例を紹介。整形外科と内科を診療科目とし、医師1人の体制のクリニックで、運動器リハビリテーションの施設認定を受け、最新の医療機器も導入していた。また、半径1キロ以内に競合がおらず、年商は1億6000万円、役員報酬は5000万円で経営は順調だったが、病気の治療に専念するために第三者承継を選択した。

募集価格は1億7000万円。譲渡にあたり、医師は指定期限内までの経営権委譲の完了と代診ドクターに現場を任せることの2つの要望があった。手を挙げたのはとある医療法人で、減額交渉はあったものの、要望を踏まえた対処を行い、譲渡側も減額を了承したという。

後継者不足に悩む病院が多数

神子氏に続き病院の第三者承継についてストライクの箕浦氏が解説。その件数は増加傾向にあるとしつつ、厚生労働省公表の資料から、約149万床の病床数に対し、民間最大の医療法人グループでも、約1%のシェアしかなく、業界再編が進んでいない状態にあると分析しているという。その一方で、病院開設者の平均年齢は64.3歳と高いと指摘した。

課題を深掘りし、後継者不在の病院が増えていること、医師や看護師などの医療人材や事務長人材が不足していること、建物の老朽化や設備購入費用の負担などを理由に第三者承継の活用が増えているという。

譲渡価格と2つの実例

譲渡価格を左右するポイントと2つの実例についても紹介。まず、譲渡価格では、主なポイントとして7つの要素を紹介した。

【譲渡価格を左右する主なポイント】
・理事長(院長)が第三者承継後も一定期間残っていただけるか​
・エリア(人口動態)​
・病院建物の築年数​
・常勤医師の年齢​
・従業員の資格取得状況・年齢​
・出資持分の有無​
・内部留保

それを踏まえて、箕浦氏は実例を2つ紹介。一つは、譲渡側は50床規模の関東の医療法人で、理事長は80歳代で高齢、医師の実子は別の病院で勤務し、継ぐ意思はなかった。院長は病院経営への抵抗があり、事務長は適任がおらず、親族が務めていた。さらに、建物の老朽化の問題などもあり、閉院も考えた。

その一方で、地域医療を長年支えきたことから、行政からも経営継続が望まれており、最終的に第三者承継の道を選択した。承継後は院長は続投することになり、病院を譲受した法人が事務長を派遣、建物についても行政の協力を得ながら、移転を検討している最中だという。

もう一つは病院経営と診療の分離を取り上げた事例。譲渡側は100床規模の北関東の医療法人で、理事長は経営と診療への対処に限界を感じていた。診療報酬の改定により売上が徐々に低下していたこと、常勤医師の高齢化が進んでいたことから、将来が見通せずにいた。

理事長は40代と若いことから、第三者承継に踏み切るには迷いもあったが、譲受側と何度も顔を合わせて、運営方針やビジョンの共有を図り決断。譲渡後も引き続き理事長を続投し、地域医療に貢献しているという。

こうした実例を踏まえて、経営を第三者に任せて、診療は継続するケースが増えているとまとめた。

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