売らず、貸さず、壊さず

見学の記念に繭のプレゼント

片倉工業は1987年に富岡製糸場の操業を停止し、1994年には熊谷工場の操業も停止した。工場としては操業を停止せざるを得ないとしても、その工場建物と製造技術の歴史的・文化的価値を認めた片倉工業は、工場の保存管理に努めることとなる。そして2005年、富岡市からの重要文化財指定の意向を受け、まず建物等を寄贈し、翌年、敷地については売却することとなった。

富岡製糸場の操業停止から富岡市への寄贈までの18年間、片倉工業は、富岡製糸場を他に売却・貸与したりせず、取り壊しすることもなく、ていねいに保存に務めた。それは、「日本の近代化の原動力となった製糸場・製糸業の原型を残すことが何より重要であると考えた」(片倉工業ホームページより)ことが継承されてきたからだろう。

富岡製糸場が世界文化遺産に登録されて5年が経つ。かつてその製糸場をM&Aした企業は、その産業遺産の価値が永く伝えられることを願い「一緒に過ごした時間を誇りに思う。ありがとう」と暖かなエールを送っている。

文:M&A Online編集部