調査会社の東京商工リサーチは2016年4月、全国の支社店がまとめた地区ごとの倒産集計を取りまとめて分析した「2015年度(15年4月-16年3月) 全国企業倒産状況」 を発表した。その内容を見ると、直近の企業を取り巻く環境の変化をうかがうことができる。同社、情報本部情報部課長の増田和史氏に解説してもらった。

―― 貴社では先ごろ、2015年度(15年4月から16年3月)、1年間の倒産集計が取りまとめられました。概況はどのようになっていますか。
 15年度(15年4月から16年3月)の全国企業倒産(負債総額1000万円以上)は、8684件で、負債総額は2兆358億4300万円でした。倒産件数は、前年度比で9.0%減(859件減)で、年度としては7年連続で前年を下回っています。また、1990年度(7157件)以来、25年ぶりに9000件を割り込みました。バブル景気の最後のころぐらいの低水準です。

 ただ、倒産件数は少ないものの、正直なところ、景気の回復感はあまりありません。15年度は全体的には円安基調が続き、輸出中心の大企業の一部は恩恵を受けました。原油価格が下がって運送業などにも好影響となっています。しかし、内需型が多い中小企業にとって、円安はコストアップに繋がるリスク要因にもなります。景気回復はなかなか中小企業まで浸透していないのが課題です。

 倒産件数が減った要因は、景気の自律的な浮上というよりは、金融機関が中小企業のリスケ(借入条件の変更)に柔軟に応じるといった、金融支援効果によるものが大きいと思われます。

 具体的に言えば、7年前はちょうどリーマン・ショックの影響で倒産件数が非常に多かった年です。そこで09年12月、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(中小企業金融円滑化法)」が施行されました。いわば、借入金の返済負担を軽減させることによって、政策的に倒産を封じ込めようとする取り組みです。同法は13年3月末に期限を迎えましたが、監督官庁の方針は従来と変わらなかったため、金融機関の貸出先に対する姿勢も変化せず中小企業にとって返済のプレッシャーはそれほど大きくなりませんでした。

 実は、この中小企業金融円滑化法を利用している企業は全国に30万社から40万社あると言われています。これらはいわば倒産の予備軍です。先ほど、15年度の倒産件数が9000件割れしたと紹介しましたが、倒産件数はこれまでのピークで2万件程度です。その数の20倍以上の企業が、銀行に約定どおり払えないというわけです。表現はあまりよくありませんが、これらの企業がなんとか生きながらえた、延命してきたことで企業倒産は歴史的な低水準にとどまった1年だったと見ることができます。

―― 15年度の倒産集計において、負債額、業種(産業)、地域などで特徴があるのでしょうか。
 1社で数千億円もの負債を抱えて倒産するような企業が出ると、負債総額もかなり上下します。15年度は、前年度1件もなかった負債1000億円を超える大型倒産が2件発生している影響が大きくなっています。

 ただし、負債額で言えば、負債1億円未満が全体の7割(構成比71.3%)を占めており、中小・零細企業の倒産が圧倒的な割合となっています。

 倒産動向を産業別に見ると、10産業のうち9産業と、ほぼ全業種で件数が減少しています。唯一、金融・保険業だけが倒産件数が増えていますが、金融・保険といっても、銀行や証券会社ではありません。年金資金運用会社や投資ファンドなどで、投資会社が不適切な会計操作を行ったり、放漫な経営をしたりして倒産するケースが増えています。

 ちなみに当社では、かねてから建設業に注目をしています。建設業の倒産件数は全体の3割くらいを占めます。全国倒産件数と建設業倒産の件数は、ほぼリンクしています。日本の基幹産業であり、母数も多いという特徴もあります。つまり、建設業の動向が、日本の景気を計るバロメーターになるわけです。

 そのため政府としても、景気が悪くなると公共工事を出して仕事を増やすというような傾向があります。実際にここ数年はアベノミクスの財政出動もあり、建設業では仕事が増え、倒産件数も減っています。ただ、今後はどうかと考えると、建設業の中でも土木関連は厳しく、倒産件数が増える傾向にあると思われます。

 倒産動向を地域別に見ると、全国9地区すべてで倒産数が前年度を下回っています。ただ、ここで気になるのが関東の倒産件数です。全国でも最多なのはもちろんですが、15年度の下半期は件数が増えています。これは象徴的で、先行指標になると考えられます。