今回、紹介するのは清水一行著「小説兜町(しま)」。半世紀以上も前の1966年に出版された経済小説の名作。今回、角川文庫から改版して発刊されることになった。今や歴史書ともいえる本書だが、兜町の今昔を知るうえで格好の一冊だ。
主役の柳田直道は、中堅自動車メーカー・シバ自動車の宣伝部係長。無公害安全車「アポロ1200」の「ノンストップ全国縦断20周・10万キロ公開テストキャンペーン」を仕切っている。ところがあろうことかキャンペーン最終日に死亡事故が起こってしまう。
敵対的な企業買収の実態を広く世間に知らしめた、経済小説家・清水一行氏の代表作の一つ。すでに刊行から30年近く経っており、内容については広く知られている名著なので、ここでは小説のモデルとなった買収事件を紹介する。その後の両社の数奇な運命は…。