ブラザー工業は9日、産業用プリンター大手のローランドディー.ジー(DG)に提案しているTOB(株式公開買い付け)について、買付価格を5200円から引き上げないことを決めたと発表した。これにより、5月中旬をめどに始める予定だったTOBを見送り、買収合戦から撤退する形となる。ローランドDGは米投資ファンドのタイヨウ・パシフィック・パートナーズと組んでMBO(経営陣による買収)を進めており、これに対抗してブラザーが買付価格の引き上げに動くかが注目されていた。
買付価格を引き上げないことを決定した理由について、ブラザーは「事実誤認に基づく主張や具体的な根拠を欠く主張を繰り返すローランドDGの経営陣との間で、信頼関係を構築することは今後見込めないと判断した」としている。
タイヨウは4月末にローランドDG株の買付価格を従来の5035円から335円引き上げて5370円に引き上げ、ブラザーが提示する5200円を上回る水準とした。ブラザーが事実上の買収断念を発表した5月9日のローランドDG株価の終値は前日比250円安の5360円で、買付価格の範囲に収まるまで低下した。
ローランドDGへのTOBはMBOの一環として2月13日に始まった。これに対し、3月半ばにブラザーがローランドDGの子会社化に向けた対抗TOBを予告したことで、争奪戦の様相を呈していた。