ヤマダホームズ(群馬県高崎市、清村浩一社長)は2023年10月、セキホーム(富山市、関口学社長)の株式を取得し、子会社化した。セキホームは関口社長が引き続き経営の指揮を執りつつ、ヤマダホールディングス(ヤマダHD)の傘下で一体的な成長を目指す。一方、ヤマダHDは住宅、家電と家具、EV(電気自動車)を、ファイナンスを含め一体的に提案する「暮らしまるごと」戦略を推進する。グループとしてどのようなシナジーを見込むのか、清村社長に今後の戦略について伺った。
――簡単にヤマダホームズの沿革について、ご説明お願いします 2011年、当時のヤマダ電機が大阪に拠点を持つエス・バイ・エルと資本提携(M&A)しました
創業者である山田昇(現ヤマダHD代表取締役会長)が、人口減少や高齢化が進み、IoTの時代を迎える中、持続的な成長を続けるために、住宅、家電、家具などを一体的に提案する「暮らしまるごと戦略」を着想し、住宅事業に参入することになりました。
エス・バイ・エルは、中堅から上の価格帯を得意とする注文住宅メーカーでした。その後、ヤマダ電機はもう少し低価格帯を狙った「株式会社ヤマダ・ウッドハウス」を設立して、住宅事業を拡大していきました。その後、グループの住宅事業の生産性を高めるため、2018年にグループの住宅関連4社を合併し、ヤマダHDの住宅事業を担う、「ヤマダホームズ」として誕生しました。
――セキホームをグループ化した背景は
富山には、直営の総合展示場を持っていましたが、ドミナント展開、シェアを拡大できていない状況でした。そこで、外断熱工法に強みを持っている、かつ、長年の富山エリアでブランドと品質と安心を構築されたセキホームさんがグループに入って頂こうと考えました。
ヤマダホームズの全国的な知名度と、セキホームが持つ富山エリアでのブランド力を合わせれば、シナジーを発揮することができます。ヤマダHDの持つインフラを使っていただければ、まずコストも下げられますし、「人」も融合できます。そういう面ではセキホームとして、もっと受注棟数を上げることができると期待しています。
――店舗では「ヤマダホームズ by セキホーム」の看板をつけていますね
ヤマダホームズは、ブランディングの一本化という方針を掲げています。今まではどちらかというと地域のハウスメーカー様は、そのブランドをそのまま生かしていたのですが、今回は「ヤマダホームズ by セキホーム」という看板をつけさせてもらっています。
――ヤマダホームズとして、今後の事業領域の拡大をどう進めますか
セキホームの他にも、過去、徳島、長野、神奈川でも地元に根ざした住宅メーカーをM&Aしています。
今後については、直営でやる方法とM&Aをハイブリッドに考えています。
家電量販店と違って、そのエリアに店舗や展示場を作ったからといって、しっかりとシェアが取れるかというと、簡単にはいかない部分があります。
人材がとても大事で、地域で根ざした営業ができる人、それから設計ができる人、工事ができる人、そして調達ができる人が必要です。そして、メンテナンス、あるいはリフォームの体制を築く必要があります。
これから積極的な中途採用、あるいは新卒社員の確保を進めて、人材をまず確保し、既存の住宅の展示場でしっかりと教育された人たちが、空白のエリアに出店をする。そういった自前で進出していくという戦略もあります。
また、ご縁があれば、M&Aという形をとっていきます。我々からすれば即収益に貢献していただけますし、ヤマダHDのシナジーを生かしていただければ、グループに入った会社様も経済的な効果も享受できます。
我々はそのエリアの中で「ヤマダホームズby(地域のハウスメーカー)」のブランド、これを通じてヤマダホームズのエリア展開を加速することができます。
――47都道府県への展開はいかがでしょうか
地域の住宅メーカー、工務店さんは、そのエリアの中で非常に強い販売力を持っています。
「ヤマダ」の冠を掲げて全国展開している以上、私達も住宅分野で、全国のシェアを見据えなければなりません。その中でM&Aという形で、地域のハウスメーカー様がグループに入ることによって、まずその成長性、ネットワーク化という面で言えば、「時間」を買うことができます。
地域の強みを生かしながら、かつヤマダというブランドを十分に生かしていただければ、さらにお客様の層が増えていく。こういったシナジーを発揮させるっていうのが、ヤマダホームズの考え方です。
まだ空白のエリアが多数ありますので、これを「伸びしろ」と見ていただきたいと思います。
ただ、市場性をしっかり見ないと、やみくもに全国展開を進めれば不採算な営業所を作ってしまうので、そこは慎重に進めていきたいと思います。
――地域の違いについてどのように対応しますか
それぞれのエリアの特性を知って、そのエリアの中での市場分析をしっかりとやります。かつ、ターゲットをそれぞれのエリアに応じて絞り込んで、戦略的に商品を投下するというやり方をしなれば、ホームズのシェアは上がらないと思っています。
――「暮らしまるごと戦略」の中で太陽光発電やEV(電気自動車)などがセットになった、「YAMADAスマートハウス」を強化されています
ゼロエミッションなどの環境対策や、耐震対策が今後当たり前になってきます。
スマートハウスについて、ヤマダホームズらしい商品というものが加わったと思います。
「V2H」の機能を標準搭載し、EVを「動く蓄電池」として利用します。太陽光で発電した電気をEVに蓄え、その電気を家庭用にも使うことができます。災害の時も、3日間くらいはEVから電気をまかなえます。
一般的な4名様の家族で計算すると、東京都内なら電気代とガソリン代、ガス代などが、だいたい月1万7000円ぐらい節約できます。
ここで、最長50年のヤマダの低金利ローンを使うことによって、お客さんの実質負担額は大幅に減ります。
「暮らしまるごと戦略」の中で、ヤマダHDのグループの力を結集した商品となります。セキホームさんのように、M&Aでグループに入った企業も、こういったヤマダホームズのスマートハウスを販売することで受注棟数を増やすことも可能です。
――最後に、M&Aを今後検討している経営者に向けて一言お願いします。
ヤマダHDあるいはヤマダホームズというブランディングに期待して、シナジーをもっと発揮して成長されたいという企業様は、(ヤマダとの資本提携は)うってつけかと思います。
事業承継だけをターゲットにするのではなく、お若い経営者がもっとブランド力を活かして成長したい、ヤマダの信用力を活かしたいというお気持ちがあれば、十分に経営をお任せしますし、成長できると思っています。
マネジメントする側として伝えているのは、まずしっかりしたビジョンを持ってください。それと、ビジョンを達成するだけのエビデンスを準備してください。そして最後に大事なのは、結果を出してください。
この三つさえ、しっかりとしたポリシーを持っていらっしゃれば、私達のグループに入っていただく強みは生かせていかいただけるかと思っています。
◆会社概要
株式会社ヤマダホームズ(群馬県高崎市)
1951年に大阪で設立。「エス・バイ・エル株式会社」が2011年、ヤマダ電機(現ヤマダHD)と資本提携し、2013年、「株式会社ヤマダ・エスバイエルホーム」に社名変更した。2018年にはグループ4社で合併し、現社名となる。従業員は単体で1,715人(2023年11月末現在)。
◆略歴
清村 浩一 (きよむら・こういち)株式会社ヤマダホームズ代表取締役 兼 社長執行役員
1982年4月 株式会社ベスト電器 入社
2016年6月 同社 執行役員経営企画部長兼社長室長
2019年10月 株式会社ヤマダ電機 経営企画室経営戦略室長
2020年4月 株式会社ヤマダホールディングス 執行役員経営企画室長 兼サステナビリティ推進室長
2023年9月より現職
株式会社ストライクでは、経営戦略上の一つの選択肢として、M&A、事業承継をご提案しております。
すぐ必要ではないものの、将来的な選択肢として、M&Aをお考えの経営者様も、まずはお気軽にご相談下さい。