EDINETガイド~大量保有報告書をみてみよう~

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EDINETで大量保有報告書を見てみよう

新聞の証券欄などで「●●ファンドが〇〇株を何%取得。大量保有報告書で判明」などというタイトルを目にしたことはありませんか?

「大量保有報告書」とはいったいどんなものなのでしょう。今回は「大量保有報告書には何が書いてあるのか」、「どうやって閲覧するのか」を一緒に見ていきましょう。経済ニュースを読むのが苦ではなくなりますよ。

ざっくりと理解しよう「大量保有報告書」とは

国内に上場している株式等を大量に取得した際、内閣総理大臣*(金融庁)への報告義務が発生します。これを「株式等の大量保有の状況に関する開示制度」(通称5%ルール)といい、政府(実際は管轄の財務局)へ提出する報告書を「大量保有報告書」と呼んでいます。(*).内閣総理大臣に提出するというところは、金融庁長官に権限が委任されています。(金融商品取引法194条の7、府令37条の2)

この5%ルールという制度は、株価に影響を及ぼしやすい大量保有の情報を公開し、市場の公正性、透明性を高めるとともに、投資家の保護を徹底することが目的です。

日本の金融市場では、組織再編、M&A、経営参加、取引関係の強化など、さまざまな動機で企業の株式等を大量に取得することがあります。この時に株価が乱高下することが多いのですが、一般投資家が不利益を被らないように、株式等の大量保有の状況に関する情報を、広く一般投資家に周知(開示)することになっているのです。

大量保有報告書には、以下の3種類があります。

大量保有報告書 株式を5%以上取得した場合
変更報告書 大量保有報告書を提出後、1%以上の増減変更があった場合
訂正報告書 提出書類に不備があった場合

大量保有報告書をチェックすると、「今、会社を動かしているのは誰か?」、「今、会社を欲しがっているのは誰か?」という重要事実がわかります。

それでは早速、EDINETに提出された大量保有報告書を見てみましょう。

EDINETで大量保有報告書を検索しよう

書類検索:「発行者(銘柄指定)」で検索する

大量保有報告書は「提出者(ファンドなど)や発行者(銘柄指定)」、「期間(当日提出された分など)」から調べることができますが、今回は「発行者(銘柄指定)」で検索する方法をご紹介します。

まず、EDINET(https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/ )にアクセスし「書類検索」をクリックします。2ヶ所ありますが、どちらをクリックしても同じです。

書類簡易検索画面から、調べたい銘柄名(ここではカルソニックカンセイ)を発行者の欄に入力し、「大量保有報告書」の書類種別にチェックを入れ、検索ボタンをクリックします。

カルソニックカンセイに関する大量保有報告書の検索結果が表示されました。

今回は、平成29年3月29日提出分の報告書を見てみましょう。大量保有報告書のリンクをクリックします。

別ウインドウで、大量保有報告書が表示されました。

大量保有報告書は、「表紙」「発行者に関する事項」「提出者に関する事項」の3部構成です。左側のメニュー部分にある目次をクリックすると、その記載部分にジャンプすることができます。

「表紙」を見てみよう

まず、表紙について見てみます。

①提出書類が「大量保有報告書」であることを示しています。

②この書類を提出する根拠となる金融商品取引法の条文を示しています。

③提出先です。本店の管轄財務局となります。

④提出者の名称です。個人の場合は個人名が記載されます。

⑤提出者の本店所在地です。個人の場合は個人の住所が記載されます。

⑥報告義務発生日です。つまり、保有割合が5%を超えた日です。

⑦この書類をEDINETに提出した日です。

⑧提出と共同保有者の総数です。この大量保有報告書は提出者1名ですので、1と記載されています。

⑨変更報告書の提出理由です。今回は大量保有報告書なので、記載はありません。

「本文」を見てみよう

発行者に関する事項を見てみよう

①発行者の名称です。

②発行者の証券コードです。証券コード<7248>のカルソニックカンセイに対する大量保有報告書であることが分かります。

提出者に関する事項・保有目的・重要提案行為等を見てみよう

①大量保有報告書の提出者の名称です。ここでは法人のCKホールディングス(コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)というファンドの傘下です)が提出したことがわかります。

②提出者の本店所在地が記載されています。

③保有目的が記載されている項目です。ここでは「完全子会社化を目的」としています。「会社法179条に基づき」とは、株式等売渡請求のことです。株式公開買付け(TOB)により対象会社の総株主の議決権の90%以上を取得した場合、少数株主等が保有する株式等を強制的に取得できる権利です。(純投資の場合は、支配する意志がないことを明記しています。)

参考:【法律とM&A】「特別支配株主の株式売渡請求」

「保有目的」で一番多いのが「純投資」、次に「経営安定のため」(いわゆる長期保有)です。今回のように「完全子会社化を目的」などの表現があったらM&AやTOBに発展する場合が多いようです。「モノ言う株主」と呼ばれるアクティビストファンドなどは「重要提案行為等を行うこと」と記載することが多いので、保有目的は注意して確認するようにしましょう。

④重要提案行為等を記載します。ここでは「該当なし」としています。

保有株券等の内訳を見てみよう

①提出者が提出義務発生で保有している保有株券等の総数を記載しています。この報告書では株式のみとなっており、潜在株式はありません。ちなみに、この保有株券等の表の列が、「法第27条の23第3項本文」「第1号」「第2号」に分かれていますが、第1号は信託契約、第2号は投資一任契約によりかつ議決権を委託者が保有するケースでの保有分を示すもので、あまり記載されない項目です。

②発行会社であるカルソニックカンセイの発行済株式総数です。

③保有割合で、保有株式等の総数を発行済株式総数で割った値です。小数点以下2位まで記載することになっています。

④これらの株式をどのようにして取得したかを示しています。この報告書では一括して市場外から取得しています。つまり公開買付(TOB)で株式を93.33%取得したことが分かりました。

株式等に関する担保契約・その取得資金を見てみよう

①株券等の担保契約を示しています。株式の移動に関する契約内容はここに記載されます。(本項目はその後、訂正報告書が提出されていました。)

②自己資金の額です。

③借入金の額で、その内訳は 5.で示されます。

④取得資金合計です。「自己資金 78,973,398円 + 借入金 250,000,000円 = 328,973,398円」で取得しています。

⑤借入金の内訳です。この報告書によると、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友信託銀行、日本政策投資銀行の計5行から借り入れていることが分かります。

解説は以上です。少し事例が古いのですが、全ての項目で記載されている報告書がなかなか見つからなかったので、ご容赦ください。

大量保有報告書を細かく見ていくと、個別の株式における投資情報の1つが得られます。しかし毎日提出される大量保有報告書を常にEDINETでチェックするのは大変です。M&A Onlineでは最新状況をメルマガデータベースTwitterなどで情報提供しております。よろしければご利用下さい。

➡ 大量保有報告書データベース(無料)はこちらからご利用いただけます

文:M&A Online編集部

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