マツダ初のEVが「環境立州」の米カリフォルニアで大ゴケの理由

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マツダ<7261>初の量産電気自動車(EV)「MX-30 EV」の販売が振るわない。米EV情報サイト「INSIDE EVs」によると、同車の米国販売は2022年6月にわずか23台と振るわなかった。

軽EVと同じ最大走行距離がネックに

同車は環境規制が厳しい米カリフォルニア州で売れているが、同3月に101台を販売したのをピークに伸び悩んでおり、2021年10月の同州での発売以来の累計販売台数は約500台に留まっているという。なぜ、マツダ初のEVは「世界で最も環境規制が厳しい」と言われるカリフォルニア州で売れないのか?

「INSIDE EVs」は、この程度の販売台数では開発コストも回収できないのではないかと懸念を示している。「MX-30 EV」の米国価格は3万3470ドル(約458万円)で、連邦税額控除を差し引いた実質価格は2万7145ドル(約372万円)。

競合するEVと同程度の価格だが、バッテリー容量は35.5kWhと小さく、1回の満充電当たりの最大走行距離が161km(EPA基準、以下同)と短いのがネックになっている。これは軽EVの三菱自動車<7211>「eKクロスEV」(車両価格約239万円)や日産自動車<7201>「サクラ」(同約233万円)とほぼ同じ距離にすぎない。

価格と機能のバランスが悪い「MX-30 EV」だが

同じクロスオーバー型EVの韓国起亜「EV6」は4万1400ドル(約567万円)と「MX-30 EV」よりも約8000ドル(約108万円)高いが、最大走行距離は約500kmとの3倍以上だ。

「MX-30 EV」は最も部品単価が高い電池を最小限にすることで車両価格を安く抑えたのだろうが、軽EVの2倍近い価格にもかかわらず走行距離が同程度では、価格と性能のバランスがあまりに悪すぎる。

車両価格が上がっても航続距離を伸ばすか、走行距離を抑えるのならばもっと低い価格帯にすべきではなかったか。もっとも「MX-30」はEV専用車ではない。ベースはハイブリッド車(HV)であり、EVはテスト販売の色合いが強い。

要するに「MX-30」は「市販のプロトタイプ車」ということだ。マツダはまだEVで「本気」を出していない。今後、同車の販売やメンテナンスの状況などを見ながら、EV専用車の価格や性能を決めていくことになるだろう。

文:M&A Online編集部

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