大量保有報告書でM&Aの動向がわかる!(前編)では、大量保有報告書とはどういうものなのか、企業側が見るべきポイントとは何かについて解説しました。今回は、個人投資家が見るべきポイントについてお話したいと思います。株式投資を行う人には必須の知識ですよ!
株取引でいかに儲けるかは投資家として一番の関心事です。
もちろん事業計画や決算数値をしっかり見て企業の将来性を見極めることも大事ですが、実際の株価は市場での売買動向に大きく左右されますから、大口の投資家の動きを把握しておくことは投資の判断材料になります。
また、そこまで分析する時間は無いという個人投資家が機関投資家に追随する場合にも、大量保有報告書は有効な情報源になります。
例えば、シンガポールの投資会社であるエフィッシモ・キャピタル・マネージメントは川崎汽船株式会社に大きな投資をしていますが、投資の経過を大量保有報告書からグラフ化すると以下のようになります。
見ての通り2015年の年末から2016年3月にかけて一気に株式を取得しています。この期間は変更報告書が次々出されており、買い増しし続けている様子は一目瞭然です。
この期間の川崎汽船の株価は実は下がっているのですが、同期間の日経平均はそれ以上に下落、同業の日本郵船や商船三井などは円高も重なってそれ以上の大幅下落となっています。
つまり、日本の株安と円高による海運セクターの株安を見たエフィッシモは川崎汽船を割安と踏んで買い続けたため、川崎汽船の株価は下支えされていたことになります。
個人投資家が円相場や海運セクターの状況まで考えて株取引をするのは簡単ではありませんが、分析力のある機関投資家の動きに追随することはできます。そのためには大量保有報告書や変更報告書は重要な情報源となります。
なお、大量保有報告書や変更報告書は実際の取引と5営業日のタイムラグがあります。例えば機関投資家が大量取得して株価が高騰した場合には、その数日後に公表される大量保有報告書を見て追随買いしても短期の利益は期待できませんので注意が必要です。あくまでも機関投資家の大きな動向を見るための材料として使うのが良いと思います。
また、投資元の属性によっても株価の反応が変化します。例えば川崎汽船に投資したエフィッシモは「アクティビスト・ファンド」と呼ばれる経営にも物言う株主で、近時では減損問題に揺れる東芝の株式を大量取得して話題になっています。この辺の情報も株価と照らし合わせてみて、他の個人投資家と差をつけていきたいものです。
貴重な情報が含まれている大量保有報告書ですが、EDINETから1つずつ報告書を開くのは大変です。そこで、まずは一覧性のあるデータベースに当たってみるのがおすすめです。
データベースを利用するメリットは?
上記の川崎汽船では数十件の変更報告書が出されていますが、EDINETでは1つ1つ開かなければ株式の保有割合が分かりません。「大量保有報告書DB」では数十件の報告書で公表された保有割合とその増減が一覧できるので、最新の保有割合のみならず、どういうトレンドで買い増し・処分されているのかが分かりやすくなっています。
お目当ての会社について調べるには?
「大量保有報告書DB」では「対象会社」欄に会社名を入れて検索ボタンを押すだけで、報告書ごとに保有割合とその増減が一覧できます。上述した川崎汽船のグラフなどもここから作っています。このように検索した報告書リストでは、さらに投資先企業や保有者のリンクをたどることができ、会社の業績や保有者の他の投資先などの基礎情報も簡単に見ることができます。
業界について調べるには?
特定の業界についてM&A動向を調べたいといったときには、「業種」を使って検索します。例えば業種で「水産・農林業」を選んで検索ボタンを押せば、この業種に関する大量保有報告書がすべてリストアップされてきます。
投資元企業でも検索可能
気になる投資家の大口投資先や売買動向を調べたいときは、「保有者」欄に投資家名称を入れて検索することができます。長いカタカナの正式名称を持つ外資系機関投資家などでも、部分的に名称が合っていれば表示してくれるので便利です。
組み合わせ検索も可能
更に「開示日」欄で期間を限定して検索するなどの組み合わせも可能です。例えば「建設・土木」業の2016年上半期の大量保有報告書のリストアップなども簡単にできます。
まずは「大量保有報告書DB」でお目当ての会社についてどんな大量保有報告書や変更報告書が出されているのか把握し、気にかかる部分についてEDINETで原本に当たってみましょう。企業にとっても投資家にとっても貴重な情報を使わない手はありません。
・大口の投資家の動きを把握しておくことは株式投資の判断材料になる。
・大量保有報告書データベースでお目当ての会社を検索し、twitterやメルマガでフォローすることをおススメします。
➡ 大量保有報告書データベース(無料)はこちらからご利用いただけます
文:M&A Online編集部
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