押さえておきたい大量保有報告書の“報告義務”とは

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株式を誰が(どの会社が)、どれだけ保有しているかを知ることができる「大量保有報告書」。これまで「大量保有報告書でM&Aの動向がわかる!」(記事はこちら)などの記事で概要をご紹介してきましたが、本稿では3回に分けて、株式を大量に保有する側の立場から、その報告義務について解説します。

第1回目は、入門編として報告義務が発生する「5%ルール」の流れを解説します。

報告義務が発生する「5%ルール」とは?

上場会社の株券等の保有者で、その保有割合が全体の5%を超える者は「大量保有者」と定義づけられ、内閣総理大臣*への報告義務が発生します。
(*)金融庁長官にその権限が委任されている。(金融商品取引法194条の7、府令37条の2)

これが「株券等の大量保有の状況に関する開示制度」(以下、5%ルール)と呼ばれるものであり、その提出書類を「大量保有報告書」といいます。大量保有報告書の写しは各証券取引所へ提出し、5年間の公衆縦覧が義務付けられています。

また、さらに5%以上取得した大量保有者がその後1%以上の増減を伴う売買をした場合、または大量保有者の重要事項に変更があった場合には「変更報告書」の提出が義務付けられています(金商法27条の25)。

この制度は金融証券取引法で定められており、会社の支配権および株価形成に影響を及ぼしやすい大量保有の情報を公開することで、市場の公正性、透明性を高めるとともに、投資者の保護を徹底することが目的です。

5%ルールの流れ M&A Online編集部作成

報告書が提出されるタイミングはいつ?

「大量保有報告書」及び「変更報告書」は、保有する株式が全体の5%を超えると大量報告、以後1%以上増減すると変更報告という報告形態になっています。例を挙げて報告のタイミングを説明します。

以下は、ある投資家が上場会社X社の株式を取得・売却を行った時の、その保有割合の推移を示したものとします。

例:ある投資家がX社株式の売買を行った保有割合の推移

保有割合の推移に応じて「大量保有報告書」または「変更報告書」の報告義務が発生します

A日:X社株式の保有割合が6%となりました。この時、投資家はX社に対する大量保有者となり、大量保有報告書を提出する必要が生じます。(それまでは5%以下の3%を保有していたので、報告の必要はありません)
A日が報告義務日となりますので、この投資家は「A+5営業日」までにEDINETに大量保有報告書を提出する必要があります。

B日:投資家は買い増しをして、保有割合が8%になりました。A日で報告した6%に対して1%以上増加していますので、変更報告書を提出する必要が生じました。
B日が報告義務日となりますので、この投資家は「B+5営業日」までにEDINETに変更報告書を提出する必要があります。

C日: 株式を一部売却して、保有割合が5.5%になりました。B日で報告した8%に対して1%以上減少していますので、変更報告書を提出する必要が生じました。
C日が報告義務日となりますので、この投資家は「C+5営業日」までにEDINETに変更報告書を提出する必要があります。

D日:さらに売却を進め、保有割合が1%になりました。C日で報告した5.5%から1%に減少していますので、変更報告書を提出する必要が生じました。
D日が報告義務日となりますので、この投資家は「D+5営業日」までにEDINETに変更報告書を提出する必要があります。また、保有割合が5%以下となりましたので、今回の提出で投資家は大量保有者ではなくなりました。

E日:再び買い増しを行って、保有割合が7%になりました。この時、投資家はX社に対して大量保有者となりましたので(変更報告書ではなく)新たに大量保有報告書を提出する必要が生じました。

以上が大量保有報告書の報告義務に関する基本的な流れとなります。次回以降は、保有割合の計算方法や保有者の定義、そして特例報告制度と罰則規定を取り上げます。詳しい決まりごとについても確認していきましょう。

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文:M&A Online編集部

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