カーナビ依存のパイオニアは「開拓者」として輝きを取り戻せるか

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同社ホームページより

パイオニア <6773> が、カーナビをはじめとする主力事業の車載機器事業で、複数の企業に資本参加を含めた提携を呼び掛けている。パイオニアはカーナビの不振などで18年3月期まで2期連続で最終赤字となった。

赤字拡大で「待ったなし」の状況に

2018年4~6月期も66億円の最終赤字を計上し、赤字幅が拡大。事業継続リスクを注意喚起する「継続企業の前提に関する注記」を決算資料に記載した。

欧州企業との特許訴訟や、欧州でのホームシアター製品およびホームオーディオ製品の再販価格維持と販売地域制限行為による約13億円の課徴金支払いなどで発生した特別損失33億円が原因だ。一般販売しているカーオーディオやカーナビの海外販売も振るわなかった。

2018年9月下旬に借入金133億円の返済期限が迫っているものの、手元資金は減り金融機関からは借り換えの合意を得られていない。資本参加による経営再建が「生き残り」の必須条件となる。

パイオニアは長期的な経営悪化が続いており、2010年にプラズマテレビから撤退、2015年にはオーディオなど家庭用AV機器事業も売却した。現在は「選択と集中」でカーナビなど車載機器に特化している。

しかし、カーナビの主要市場である国内自動車市場の縮小に加え、スマートフォン用無料カーナビアプリの高機能化で車載カーナビの購買意欲は下がっている。主力のカーナビ需要の好転が見込めない中で、パイオニアに復活の可能性はあるのだろうか。

プラズマテレビからも撤退し、車載機器に特化したが…。(同社ホームページより)

パイオニアを救済する「メリット」は

有力な売却先候補のカルソニックカンセイが、共同出資会社方式でパイオニアの事業を引き受ける方向で交渉が進んでいるようだ。デンソー<6902>が富士通の子会社でカーナビなどを手がける富士通テン(現・デンソーテン)を買収したのに対抗する動きとも取れる。

カルソニックカンセイは運転席周りの電装部品とカーナビをモジュール化して、自動車メーカーへの納入拡大を図ることになりそうだ。モジュール化により従来の計器とカーナビの部品を相互利用するなどして小型化やコスト削減が実現できるほか、スピードメーター上にカーナビ画面を投影するといった新たな提案も可能になる。

パイオニアはオーディオメーカーとして発足し、1980年代にレーザーディスクで映像分野に進出、1995年にはアップルのパソコン「マッキントッシュ(現・マック)」互換機を、1996年にDVDプレーヤーや、現在のスマートフォンに近い国産初の全面ディスプレーの携帯電話を、1997年にハイビジョン対応プラズマディスプレイーを相次いで開発するなど、エレクトロニクス業界の「開拓者(パイオニア)」として成長してきた。

しかし、2004年に日本電気(NEC)<6701>からプラズマディスプレー事業(NECプラズマディスプレイ)を買収し、パイオニアグループに組み込んでからは不運が続く。社運をかけたプラズマディスプレーは大画面テレビ競争で液晶ディスプレーに敗れ、経営のお荷物に。

「落ち目」のカーナビで、どう生き残る?

2008年にパイオニアはプラズマパネルの自社生産から撤退、2009年3月にプラズマテレビからの完全撤退する方針を発表し、同5月にはホンダ<7267>から第三者増資を受けて同社が第2位の大株主になった。その後も2010年には三菱化学、三菱電機<6503>と、2013年にはNTTドコモ<9437>と、相次いで資本提携を結んでいる。

すでにパイオニア本体に残っている事業は「カロッツェリア」ブランドのカーナビ・カーオーディオ機器のほかは、BD(ブルーレイディスク)マルチドライブなどのパソコン周辺機器といったニッチ製品だけだ。今後、成長が見込めるとすれば、情報サービスに対応したカーナビシステムだろう。

パイオニアの売上構成(同社ホームページより)

現在はオプション扱いになっているカーナビを標準装備品として事実上無償でユーザーに提供し、その見返りとしてカーナビ経由で情報を告知した企業から広告料または成功報酬制による紹介料を徴収するビジネスモデルの提案だ。

ドコモとの資本提携で、同社が提供するスマートフォン向け情報提供サービス「ドコモ ドライブネット」と車載電子機器の相互乗り入れに取り組んでおり、すでにノウハウは存在する。

再びパイオニアが「開拓者」として輝きを取り戻すことができるのか。そのために先ずはカルソニックカンセイとの資本提携を現実のものとすることだ。

文:M&A Online編集部