糖質の少ないすし誕生か「はま寿司」運営のゼンショーが京大と共同研究

alt
写真はイメージです

回転ずしチェーン「はま寿司」や、牛丼チェーン「すき家」などを運営するゼンショーホールディングス<7550>は、 京都大学大学院医学研究科に共同研究講座「食と健康科学研究講座」を開設した。

京大のAI(人工知能)解析技術や最新の機器分析学と、ゼンショーが持つ食資源などを活用して、食事に対する満足感が得られ健康機能を維持できるような食品素材の探索に取り組むのが狙いだ。研究成果は新しい健康メニューの開発に活かし、新メニューはゼンショーグループの国内外の1万店で提供する。

回転ずしチェーンでは、スシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIES<3563>が、ゲノム編集技術を持つプラチナバイオ(広島県東広島市)、ゲノム編集(遺伝子を切断し、もともと備わっている性質を変える技術)技術を活用した水産物の品種改良を進めるリージョナルフィッシュ(京都市)と共同で、魚の品種改良の研究を進めている。

くら寿司<2695> も、ウミトロン(東京都品川区)と連携し、AIやIoT(モノのインターネット)技術を活用した給餌機を用いて、養殖事業を展開している。

これら取り組みの成果はいずれも、すしの品質向上や価格低下につながる。ハイテク競争の行方はいかに。

関連記事はこちら
「くら寿司」に続き「スシロー」も漁業に参入 ゲノム編集で魚の品種を改良

外食企業で初の取り組み

ゼンショーと京大が取り組む食品素材の探索は、AIを中心としたもので、味覚などの感覚受容体の解析技術や、腸管での栄養吸収の解析技術などを用いた計算科学による手法で食品素材探索を行う。

この方法は、創薬科学で用いられているもので、ターゲットとなる化合物や、その作動メカニズムが解明されている場合には非常に有効とされている。外食企業が、このような食材に関する研究講座を開設するのは初の試みという。

得られた知見からは、食材の組み合わせや、摂取の仕方を工夫することにより、無理なく健康機能を維持できる食環境の提供を目指す計画だ。

糖質の摂取量が多すぎると、さまざまな病気を引き起こすが、極端な糖質制限は体への負担となるとともに、食べる楽しみが損なわれる。

ゼンショーは、楽しく満足感のある食事を通じて、無理なく健康機能を維持できるよう、今回の共同研究に踏み切った。研究成果によっては糖質の少ないすしや牛丼が誕生するかもしれない。

バイオテクノロジーやAIを活用

FOOD & LIFE COMPANIESが取り組んでいるゲノム編集は、品種改良に用いると、交配による品種改良よりも大幅に時間を短縮することができる。FOOD & LIFE COMPANIESが、魚に対する社会のニーズを助言し、他の2社が品種改良のターゲットとなる遺伝子を探し出したうえで、ゲノム編集処理を実施する計画だ。

くら寿司による養殖は、AIが魚の食欲を判定することで、最適な餌の量で魚を生育することができる。品質の高い魚の養殖が可能になるほか、無駄な餌が海に流出することがないため、環境の保全にもつながる。

いずれの取り組みも軌道に乗れば、品質の高いすしネタの安定調達が可能になるだけに、競争力向上の心強い武器となる。

文:M&A Online編集部