日産がEVでルノーにすり寄らざるを得なくなった理由とは

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日産が量産EVの第2弾として12年ぶりに発売される「アリア」

日産は再びルノーの軍門に降るのか?カルロス・ゴーン前会長の解任後、仏ルノーから距離を置いてきた日産自動車<7201>が、再接近にハンドルを切った。1月24日にルノー・日産・三菱自動車連合が電気自動車(EV)などの電動車開発に、2026年度までの5年間で3兆円を共同投資すると発表したのだ。

トヨタの「本気」が日産の尻を叩いた

これは昨年12月14日にトヨタ自動車<7203>が発表した「バッテリーEV戦略に関する説明会」を受けてのもの。日産は2010年に世界初の量産EV「リーフ」を発売し、日本車メーカーでは「EV先進企業」と自負していた。ところがEVに後ろ向きと思われていたトヨタが「2030年までに30車種のEVを投入し、年間350万台の販売を目指す」と発表し、状況は一変した。

トヨタの本格参入で、EV向け電池の「争奪戦」が始まる(トヨタホームページより)

トヨタが発表通りのペースでEVを大量投入するかどうかは不透明だ。しかし仮にハッタリにせよ、トヨタがそうした姿勢を見せたことだけでも状況は動く。特に日産が神経を尖らせているのが、EVの基幹部品である車載電池の動向だ。

すでにEVシフトを明確にしている欧州車に加えて、米国車、韓国車メーカー、そして自動車販売世界一のトヨタまでもがEVの量産に動くとなれば、車載電池の争奪戦になるのは必至。日産単独のバイイングパワー(購買力)では太刀打ちできない。

12年間の「EV空白」をどう埋める?

それでゴーン後に距離を置いてきたルノーとの関係を強化せざるを得なくなったのだ。今回の連携強化を「EVシフトでルノーの日産依存が強まった」とする見方もあるが、2021年1−12月のプラグインハイブリッド車(PHV)を含むEV世界販売では、ルノーの13万6750台に対して日産は6万4201台と半分以下に過ぎない。

EV部品に限って見れば、日産が企業規模が小さいルノーのバイイングパワーに頼らなくてはならない状況だ。「リーフ」で先行した日産だが、今やルノーの後塵を拝している 。なぜこんな状況になってしまったのか? 日産にとって不運だったのは「リーフ」がゴーン前会長主導で商品化されたこと。加えて販売も予想ほどは伸びなかった。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」のたとえではないが、ゴーン後の日産にとってEVは「黒歴史」であり、積極的に新型車を展開するモチベーションに欠けたのは否めない。さらに出遅れていたハイブリッド車(HV)で、2016年に発売したエンジンを発電専用とするシリーズ方式の「ノート e-POWER」が大ヒットしたこともあって、EVの「二の矢」を放つのが遅れてしまった。

トヨタはじめ日本車メーカーが、昨年までEVシフトに慎重だったことも影響したようだ。日産は今年、ようやく2番目のEV「アリア」を発売するが、12年もの「空白期間」は大きい。トヨタの「EV本格参戦」で、日産の巻き返しはさらに厳しいものになりそうだ。

文:M&A Online編集部

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