三菱自動車<7211>が中国から生産撤退をするとの報道が、国産車業界に衝撃を与えている。それというのも撤退の理由が電気自動車(EV)との競争に破れたからだ。軽規格とはいえ世界初の量産EVを市場投入した三菱自がEVシフトへの乗り遅れで撤退するのは皮肉な話だが、他の日本車メーカーにとっても「対岸の火事」ではない。
中国自動車市場での日本車メーカーのシェアが激減している。自動車市場調査会社のマークラインズによれば、中国乗用車新車販売における2023年8月の日本車メーカーのシェアは、前年同月比3.9ポイント減の13.9%に縮小した。日本車の販売台数が同16.9%減の31万4800台だった上に、中国市場での総販売台数が同6.9%増の227万3000台とふくらんだため、大きくシェアを落とした格好だ。
国籍 | 2023年8月 | 2022年8月 | 増減率 |
---|---|---|---|
中国車メーカー | 1,298,800 | 1,047,900 | 23.9% |
日本車メーカー | 314,800 | 378,600 | -16.9% |
ドイツ車メーカー | 400,700 | 408,000 | -1.8% |
米国車メーカー | 205,700 | 229,800 | -10.5% |
韓国車メーカー | 36,600 | 37,300 | -1.9% |
フランス車メーカー | 11,400 | 18,800 | -39.4% |
総乗用車販売台数 | 2,273,000 | 2,125,000 | 6.9% |
これは8月だけの現象ではない。2023年1−8月累計でも日本車メーカーのシェアは17.8%から13.9%に3.9ポイントも落としている。こちらでも日本車の累計販売台数が232万700台と前年同期比で21.2%も減少した一方、総販売台数が1564万3000台と前年同期比で6.7%上回ったことによる。
国籍 | 2023年1-8月 | 2022年1-8月 | 増減率 |
---|---|---|---|
中国車メーカー | 8,572,100 | 7,109,100 | 20.6% |
日本車メーカー | 2,320,700 | 2,941,200 | -21.1% |
ドイツ車メーカー | 2,884,000 | 2,865,700 | 0.6% |
米国車メーカー | 1,478,400 | 1,349,000 | 9.6% |
韓国車メーカー | 246,600 | 232,600 | 6.0% |
フランス車メーカー | 104,200 | 116,600 | -10.6% |
総乗用車販売台数 | 15,643,000 | 14,655,000 | 6.7% |
反対に大きく販売台数を伸ばしているのは地元・中国車メーカーだ。8月には前年同月比で23.9%増の129万8800台になり、シェアは同7.8ポイント増の57.1%と過半数を超えた。1〜8月の累計でも前年同期比20.6%増の857万2100台になり、シェアも同6.3ポイント増の54.8%と過半数を超えている。
中国車メーカーの好調を支えているのがEVだ。中国自動車市場でのEV販売台数は8月に前年同月比14.4%増の59万7000台、1〜8月累計では前年同期比26.4%増の384万2000台と大きく伸びている。乗用車に占める割合は8月単月で26.3%、同累計で24.8%と新車販売の4分の1を占めた。中国では4台に1台の割合でEVが売れている。
この多くが中国メーカーによるもの。特にBYDが強い。同社に対抗できているのは米テスラと独フォルクスワーゲン(VW)ぐらいだ。三菱自や、「リーフ」を発売した日産自動車<7201>など、世界に先駆けてEVを量産化した日本車メーカーだったが、後が続かなかった。
環境車ではハイブリッド車で大成功を収めたために、日本車メーカーの間に「まだまだEVの時代は来ない」との認識が広がる。その結果、EVシフトに乗り遅れた。世界最大手であるトヨタ自動車<7203>ですら、EVシフトに伴う販売不振から7月に中国事業で1000人の人員削減を余儀なくされている。
中国政府は2023年6月に、EVなど新エネルギー車向けの優遇税制策を2027年まで継続すると発表した。世界最大の自動車市場である中国で、今後ますますEVシフトが進むのは確実な情勢だ。すでに中国車メーカーやテスラ、VWはEV増産にアクセルを踏み込んでいる。エンジン車並みの量産はこれからの日本車メーカーが追いつくのは至難の技だろう。日本車メーカーから第二、第三の中国撤退企業が出てくることも覚悟しておかねばならない。
文:M&A Online
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