今年2件目のゴルフ場倒産「コロナ禍」はアゲンストか?それともフォローか?

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今年2件目のゴルフ場の倒産が発生した。東京商工リサーチ(大型倒産=原則負債総額30億円以上と、注目企業の倒産情報)によると、香川県の高松グランドカントリー(三木町)は2021年11月24日に、高松地裁に民事再生法の適用を申請した。

1月21日に千葉地裁に特別清算を申請した千葉県の東京ベイサイドリゾート(君津市)に次ぐもので、負債総額は40億円を上回った模様だ。

ゴルフは新型コロナウイルス感染のリスクが低いスポーツとして若い人たちの間で人気が高まりつつあるが、高松グランドカントリーは利用者減による業績悪化に耐えることができなかった。

ゴルフ場の倒産は2019年4件、2020年4件と続いたあと、2021年は低水準で推移していた。全国で140以上のコースを運営するパシフィックゴルフマネージメント(PGM、東京都台東区)の4-10月来場者数を見ても前年同期比117.0%と堅調に推移している。

高齢化によるプレーヤーの減少という構造的な問題を抱えているゴルフ業界だが、アゲンスト(向かい風)と思われていたコロナ禍は、低水準の倒産を見る限り一時的であれ、初心者層の増加というフォロー(追い風)の面も見せているようだ。

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倒産は昨年、一昨年の半数

高松グランドカントリーは、バブル期のゴルフ場乱立に伴う競合激化に加え、ゴルフ人口の減少により、業績が落ち込んでおり、近年は会員の高齢化により退会希望者が増加していたという。ここに新型コロナウイルスが追い打ちをかけた格好で、今回の措置となった。

東京ベイサイドリゾートも、周辺ゴルフ場との競争激化、リーマン・ショック、東日本大震災、台風被害などの影響で経営状態が悪化していたところに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から業績が落ち込んでいた。

今年のゴルフ場の倒産は今のところ、この2件にとどまっており、昨年、一昨年よりも少ない水準で推移している。その背景にはコロナ禍で新たにゴルフを始める若い人たちの増加がある。

初心者層の増加は続くのか

新たにゴルフを始めた若い人たちの正確な数字は分からないものの、スポーツ用品店の売り上げなどに、その影響が現れている。スポーツ用品販売大手のアルペン<3028>は、2022年6月期第1四半期に、コロナ禍を機に増加した初心者層への対応を強化したことなどにより、ゴルフ用品の既存店売上高が前年実績を上回った。

大手のゼビオホールディングス<8281>も、初心者層の増加などで市場が拡大しているゴルフ向けの商品販売が好調で、2022年3月期第2四半期は前年同期比32.6%の増加となった。来場者数の増加が続いているPGMでは、4-10月の売上高が前年同期比123.0%となったほか、顧客単価も107.5%と前年実績を上回っている。

ただ10月に緊急事態宣言が解除され、新型コロナワクチンの接種率が70%を越える中、部活やスポーツ大会などが再開されつつあり、感染リスクが少ないと言われるゴルフへの新規参入者がこれまでの勢いを保てるのかは予断を許さない。

ゴルフ場の倒産と新規参入者は、今後どのように推移するのか。やはり風を読むのは難しいというのが実態のようだ。

文:M&A Online編集部