コロワイドのフレッシュネス買収 利用者にどんな影響?

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先週、外食業界で話題を呼んだM&Aがある。外食大手のコロワイド<7616>がハンバーガーチェーンのフレッシュネス(東京・中央)の買収を発表したのだ。フレッシュネスは「FRESHNESS BURGER」を運営する。カフェのようなアメリカンスタイルのおしゃれな店で、素材にこだわった高品質のバーガーを提供する。健康志向の女性からボリュームのあるバーガーを食べたい男性まで根強いファンを持つ。

一方のコロワイドは、「手作り居酒屋 甘太郎」を主力とする大手外食企業だ。2012年に焼肉の牛角などを運営するレックスホールディングス(現レインズインターナショナル)を子会社化、14年に回転寿司を運営するカッパ・クリエイトホールディングスを子会社化するなど、積極的なM&Aで業績を伸ばしてきた。


それでは、フレッシュネスがコロワイドの傘下に入るとどんな影響が出そうか。

まず考えられるのは店舗数の拡大だ。フレッシュネスは首都圏を中心に159店舗を運営する。これは最大手の日本マクドナルドホールディングスの約2900店舗と比べて20分の1の規模。2007年にフレッシュネスを傘下に収めた現親会社のユニマットグループは飲食だけではなく、オフィスやリゾート、介護など幅広い事業を展開していることから、出店のスピードが限定的になったようだ。

これに対し、11月から親会社になるコロワイドは外食が専業。2016年3月期の連結売上高は2341億円と前期比32%増、グループ店舗数はフランチャイズチェーン(FC)を含めて約2500店舗とマクドナルドに迫る。今後は店舗開発の豊富なノウハウを活かして、フレッシュネスの出店を加速できる可能性が高い。

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次に考えられるのは価格戦略の見直しだ。フレッシュネスで販売しているバーガーは最も安いテリヤキバーガーでも350円。630円のアボカドバーガーや720円のクラシックベーコンエッグチーズバーガーなど、マクドナルドやモスバーガーの2倍近い値段の商品も並んでいる。それでも品質の高さから一定の人気を誇るが、日々のランチ代の節約に励んでいる消費者には少し手の届きにくい印象もあった。今後はコロワイドのグループ購買力をいかして食材を安く調達できるようになる公算が大きく、価格がもう少しお求めやすくなる可能性もありそうだ。

M&Aの隠れた論点として見逃せないのが株主優待の取り扱いだ。コロワイドは500株以上を保有している株主にグループの店舗を1万円相当利用できる株主優待券を発行している。なぜか子会社のレインズインターナショナルが運営する牛角などの店舗は優待の対象外。一方で同じ買収した会社でもカッパ・クリエイトの店舗では優待券を使える。

フレッシュネスの店舗で優待券を使えるようになるかどうかは今のところ不明だ。ただフレッシュネスはレインズインターナショナルの子会社になるため、優待券が使えなくなる可能性も少なからず残る。

ちなみにライバルのマクドナルドは100株~299株を持つ株主に優待食事券を1冊配っている。バーガー類、サイドメニュー、ドリンクの商品引換券6枚ずつがセットになったもので、時価にして3000円程度。マクドナルドの株を100株買うには直近の株価で計算すると30万円ほどかかるため、優待利回りは1%になる。

これに対してコロワイド株を500株買うには約100万円かかる。同じく優待利回りを計算すると1%で互角だ。コロワイドにはまず店舗数拡大やコスト削減に取り組んでフレッシュネスを身近にしてもらう。これと並行してコロワイドの約8万人の株主にフレッシュネスを使ってもらえるよう、優待券の取り扱いを検討してほしいものだ。

文:M&A Online編集部

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