1999年は景気拡大に伴い欧米主要国の金利も上昇した。米国では景気の過熱と労働市場の逼迫(ひっぱく)に伴うインフレ懸念から金利高に。欧州でもロシア金融危機の影響から脱して国際金融市場が安定したことや景気回復期待から金利が上がった。1998年10月から1999年1月にかけての3カ月間で、長期金利は米国で2.5%、ドイツで2.0%、イギリスで1.7%も上昇している。
政治的には冷戦終結後、ロシアはソ連邦崩壊後の経済危機から立ち直っておらず、米国1強時代であったのに加え、米同時多発テロが発生する2年前で国際情勢も比較的安定していた。当時すでに成長著しかった中国も、まだ欧米や日本を脅かすほどの大国でもなかった。
総じて言えば(1)世界経済が好調 (2)金利高 (3)国際政治が安定しており、地政学的リスクが懸念されない-の3条件がそろった時に金相場は下落する。世界経済はコロナ禍の影響から脱して上昇局面にあり、欧米の長期金利も上昇しつつある。これらは金相場を引き下げる要因で、市場関係者には金相場がわずかながら下落するとの見方が有力だ。
残るは地政学的リスクだが、ウクライナ紛争がどのような結末になろうともロシアが国家崩壊しない限りは、リスクはくすぶり続ける。仮にロシアが国家崩壊したとしても、中国という地政学的リスクは残る。つまり1999年のように同1000円を切る大幅な金相場の下落は期待できそうにない。
金相場の低迷は「天下泰平」を意味する。その道のりは、まだまだ遠そうだ。
文:M&A Online
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