伊藤忠も手放した!ケータイショップの「落日」

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携帯電話ショップは通信事業者にとって「儲からない顧客」専用施設になっている?(写真はイメージ)

ついに大手商社も、携帯電話ショップから手を引き始めた。伊藤忠商事<8001>が2022年12月22日に子会社で携帯販売業界2位のコネクシオ<9422>を手放すことにしたのだ。家電量販店大手のノジマ<7419>が2023年2月9日まで実施するTOB(株式公開買い付け)に応募し、コネクシオ株の60.34%に当たる全保有株を譲渡する。伊藤忠は自社傘下での携帯電話販売に「見切り」をつけた格好だ。

伊藤忠が携帯販売子会社を手放した「ドコモショック」

ノジマはTOBでコネクシオの完全子会社化を目指す。買付代金は最大854億9300万円で、コネクシオもTOBに賛同している。コネクシオは携帯電話の販売・卸売りを目的に1997年に伊藤忠の100%出資で設立。2006年に東証2部に上場し、2007年には東証1部に指定替えした(2022年4月に東証プライム市場に移行)。同社はTOB成立後に上場を廃止する。

ノジマは早くから携帯電話販売事業に熱心で、家電専門店事業と並ぶグループの中核と位置付けている。1993年には家電流通業界で初めてNTTドコモの携帯販売1次代理店の権利を取得した。携帯電話ショップ大手のコネクシオを完全子会社化することで、同事業をさらに拡大する。

伊藤忠商事がコネクシオを譲渡する背景には、携帯電話ショップ業界の「逆風」がある。携帯最大手のNTTドコモは、2023年3月期に「ドコモショップ」の約100店舗を閉店する。最終的には全国に約2300店舗あるドコモショップのうち、3割程度の約700店舗を閉店する方針だ。ドコモショップのうち同社直営店は30店舗にすぎず、大半はコネクシオのような別会社が運営する販売代理店だ。

業界再編か、異業種の軍門に降るか…業界最大手の選択は?

コネクシオは2021年1月にケーズホールディングス<8282>の携帯販売子会社ケーズソリューションシステムズのドコモショップ事業を譲受している。「ドコモショップ」の大量閉店が、伊藤忠商事にコネクシオ譲渡を決断させた可能性が高い。

国内携帯電話市場は、ほぼ飽和状態になっている。少子化に伴う人口減少で、契約数はほぼ頭打ちに。それにもかかわらず各社で純増が続いているが、これはIoTなどの通信モジュール回線の契約増によるもの。こうしたモジュール回線のほとんどは法人契約。法人営業マンや技術担当者の派遣とネットで取引が完結するため、ショップを必要としない。

ショップを必要とするのは、ネットに不慣れで店員による対面での説明や契約、初期設定などのサポートが必要な高齢者だ。高齢者は通話が中心で、通信事業者の利益に結びつくデータ通信の利用が少ない。「儲からない顧客」である高齢者のために、高いコストをかけてショップを多店舗展開するメリットは小さくなっている。

今年気になるのは、業界最大手であるティーガイア<3738>の動向。同社は2020年8月に富士通パーソナルズの携帯電話販売事業を286億円で買収し、規模拡大で生き残りを図っている。しかし、携帯電話ショップに対する「逆風」が強まる中、ティーガイアがM&Aによる業界再編を加速するのか、それとも家電量販店など他社の傘下に入るのか。決断までに残された時間は、そう長くない。

文:M&A Online編集部

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