トヨタ自動車<7203>が電気自動車(EV)を本格展開することになった。その目玉となるのが同社の高級ブランド「レクサス」だ。これまでEVに消極的とされ、豊田章男社長も「すべてがEVになればよいという話ではない」と主張しているにもかかわらず、「レクサス」ブランドはすべてEV化するという。なぜか?
12月14日に開いた「バッテリーEV戦略に関する説明会」で、「レクサス」は2030年までに欧州、北米、中国でEV比率を100%とする。2035年には日本を含むグローバルでEV比率を100%に引き上げる目標を掲げた。つまり14年後には「レクサス」にガソリンエンジン車はなくなるということだ。
その理由は車体価格にある。EVは生産台数が少ないこともあって、車両価格が割高だ。とりわけ基幹部品である電池が割高で、先進国メーカーの場合、小型車でも車両価格が300万円を超えるのが当たり前の状態だ。
EV市場では「どうせコスト高なら、高い値段で売ってしまえ」という鉄則がある。車体価格が高い高級車であれば、高い電池コストも吸収しやすいし、そもそもそんなに売れなくても利益が取れるビジネスだ。事実、世界最大のEVメーカーである米テスラは高価格帯のEVから市場に投入し、普及につれて中価格帯へラインナップを広げている。欧州メーカーでもメルセデス・ベンツをはじめとする高級車メーカーがEV化に熱心だ。
さらに高級車を購入する高所得者層は、家庭で複数の自動車を所有するのが当たり前。つまり電池切れが気になる遠距離ドライブといったEVに苦手な用途では所有する別のガソリン車を利用し、街乗りには静かでストップ&ゴーの燃費(電費)がよく、加速がスムーズなEVを使い分けるといった具合だ。
高所得者層が環境問題に敏感という事情もある。そうした顧客層の支持を得るためには、望む商品=環境対策車、すなわちEVを本格展開するのが望ましい。EVを軸にしたマーケティング戦略と言える。「レクサス」から完全EV化に着手するのは正攻法なのだ。
文:M&A Online編集部
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