【希望退職募集】年明けから相次ぐ、アルペン・カシオ・協和発酵キリンは初めて

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カシオ計算機本社(東京・初台)

2019年に入って「希望・早期退職」の募集を発表する企業が相次いでいる。昨年は年間を通じて12社(東京商工リサーチ調べ)だったが、今年は様相が一転、年明けからひと月余りで早くも5社に上る。このうち、アルペン<3028>、カシオ計算機<6952>、協和発酵キリン<4151>は設立以来初の募集に踏み切る。

米中貿易摩擦に伴う中国経済の減速などを背景に、ここへきて製造業を中心に2019年3月期業績見通しの下方修正が広がっている。景気の潮目の変化が人員削減の動きにつながっている可能性がある。

アルペン、300人規模で募集を開始

年明け早々の1月9日、スポーツ用品小売り大手のアルペンは約300人の希望退職者の募集を発表した。社員3250人の約1割にあたり、対象は本体と子会社でレジャー用品・日用雑貨製造のジャパーナ(名古屋市)の45歳から63歳の社員。募集期間は2月4日~20日。規定の退職金に加え、特別加算金を支給する。希望退職者の募集は1972年に設立以来初めて。

同社は、「スポーツデポ」「アルペン」「ゴルフ5」の主力3業態と靴専門店「ミフト」を展開する。スポーツ用品の販売が全般的に低調なほか、ネット販売との競争激化が収益を圧迫している。

ゴルフ専門店「GOLF5」の店舗(都内)

2月6日には2019年6月期の最終損益予想を前回予想の30億円の黒字から約12億円の赤字(前期は19億7900万円の黒字)に下方修正した。不採算店舗の閉鎖や希望退職募集による特別損失が発生し、最終赤字に転落する。売上高は前期比1.1%増の2301億円、営業利益は同60.6%減の12億600万円を見込む。

光村印刷<7916>は昨年10月に17億円を投じて買収した新村印刷(東京都千代田区)で30人程度の希望退職を募集することを決めた。新村印刷の全社員の約2割に相当し、44歳以上が対象。募集期間は2月18日~3月1日。

国内印刷市場はデジタル化の進展などで印刷物需要減が続いている。新村印刷を傘下に収めた光村印刷自体も3年前に50人の希望退職(応募は71人)を募集した

カシオ計算機は早期退職優遇職制度の実施を発表した。募集期間は2月12日から3月15日。社員約2900人のうち国内営業部門やスタッフ部門の勤続10年以上で45歳以上の一般社員と50歳以上の管理職社員が対象。ただ、募集人員は定めていない。

同社の2019年3月期業績見込みは売上高1.7%増の3200億円、営業利益18.4%増の350億円、最終利益17.6%増の230億円。足元の業績が悪化しているわけではないが、昨年、コンパクトデジタルカメラ事業から撤退するなど事業基盤の再構築に取り組んでおり、この一環として人員体制を見直す。

協和発酵キリン、生産本部の社員は除く

協和発酵キリンは3月11日から希望退職者を募集する(~3月28日)。4月1日時点で45歳以上勤続5年以上の社員が対象。ただし、生産本部所属社員は除く。募集人員は定めていないが、対象人員は全社員の4割にあたる約1600人。

希望退職の募集は同社初。「社外への転進を希望する社員には最大限の支援を行う」としている。同社の2018年12月期は売上高1.9%減の3465億円、営業利益1.7%増の586億円。今期は2ケタの減収・営業減益を見込む。

◎2019年以降:希望・早期退職募集を発表した企業

社名 募集規模
アルペン 300人程度
光村印刷 30人程度(子会社の新村印刷で実施)
カシオ計算機 特に定めず
協和発酵キリン 特に定めず
ルネサスエレクトロニクス 900人程度(推定)

ルネサス、2014年以来の実施へ

ルネサスエレクトロニクス<6723>は2月8日の2018年12月期決算説明会で、希望退職を募集することで組合と交渉中であることを明らかにした。希望退職は約1800人を削減した2014年12月以来。今回の募集規模は国内を中心にグループ社員の約5%にあたる900人程度とされる。2018年12月期は売上高2.9%減の7573億円、営業利益14.8%減の667億円だった。

一方で、ルネサスは海外でのM&Aに積極的に進めている。17年2月に米半導体のインターシルを約3000億円で買収。18年9月には同じく米半導体のインテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)を約7300億円で買収することを決めた(買収完了は2019年上期中)。国内の半導体市場の縮小が続く中、海外シフトを鮮明にしている。

東京商工リサーチの2018年「主な上場企業の希望・早期退職者募集状況」調査によると、募集実施企業は2000年の調査開始以来、最少の12社となった。前年の25社から半減し、人員リストラ策は落ち着きをみせている。

リーマンショック直後の2009年に191社に達したが、円安進行で輸出産業を中心に大手企業の業績が好転した2013年から減少をたどり、2018年は調査開始の2000年以降最少だった2016年(18社)を下回った。

それが一転、2019年入りと同時に希望退職・早期退職を募集する動きが広がっている。

文:M&A Online編集部