トヨタの自動運転車、実力はホンダ以下?パラ選手村事故で疑惑が

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2021年8月にトヨタ自動車<7203>の自動運転車「eパレット」がパラリンピック選手村で起こした人身事故で、警視庁交通捜査課は1月6日、同乗していたトヨタ社員を過失運転致傷の疑いで書類送検した。同車は5段階ある自動運転レベルの上から2番目となる「レベル4」をうたっていたが、事故当時は運転手の操作をシステムが支援する「レベル2」で運行していたことが明らかに。これはホンダ<7267>の市販車がすでに実現している「レベル3」を下回る。

トヨタの自動運転技術は高くない

トヨタの自動運転技術については、これまでも出遅れが指摘されてきた。米カリフォルニア州車両管理局(DMV)が2021年2月に発表した自動運転公道試験結果報告書によると、自動運転車が運転手の介入なしに走行できた距離は米中企業が3〜4万km超だったのに対し、トヨタはわずか3.79km。「eパレット」が引き起こした事故が運転手の責任とされたのも、当然かもしれない。トヨタの自動運転技術は自動車まかせにできるレベルではなかったのだ。

トヨタの量販車は2021年4月に「レクサスLS」と燃料電池車「ミライ」にようやく「レベル2」の自動運転機能を搭載したが、ホンダはその前月に世界初となる「レベル3」の自動運転車となる新型「レジェンド」を発売している。なぜトヨタの自動運転技術はホンダの後塵を拝しているのか

実はホンダの自動運転研究の歴史は古い。1997年に開発した二足歩行ロボット「P3」が、その第一歩だったという。ホンダは1996年に開発した「P2」で、人間の代わりに労働するロボットの開発を断念。「P3」以降は小型化する一方で、認知能力を向上させていく。その目的こそ自動運転だった。

M&Aで自動運転技術を向上するトヨタ

ホンダロボットの最終形である「ASIMO」では作業能力よりも、人間とその他の物体の違いを認識する機能や障害物を回避する機能、すれ違い回避行動機能、自律行動機能などを強化した。まさに「自動運転車に応用できる技術」を研究していたわけだ。

一方、トヨタは他社との提携で自動運転車を実現しようとしている。パートナーに選んだのはソフトバンクグループ<9984>。2018年に同社と自動運転車開発などを手がけるMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)を立ち上げた。

しかし、ソフトバンクの自動運転技術は、それほどトヨタの役に立ちそうにない。ソフトバンクの自動運転子会社のBOLDLY(ボードリー)は決まったルートを巡回する自動運転バスの開発を手がけている。つまり不特定なルートを走る乗用車には向いていない。「eパレット」も小型バスだ。

トヨタは2021年4月に米ライドシェア大手リフトから自動運転部門を5億5000万ドル(約626億円)で買収すると発表した。同年には中国の自動運転スタートアップ企業のモメンタに上海汽車集団や独自動車部品大手のボッシュなど共同で5億ドル(約569億円)出資している。乗用車タイプで「レベル3」あるいは「レベル4」の自動運転車を投入し、トヨタの「反撃」が始まるのはこれからだ。

トヨタの自動運転実験車「TRI-P4」(同社ホームページより)

文:M&A Online編集部