空間除菌のヒットに沸いた大幸薬品が「コロナ慣れ」で一転赤字に

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期化で、「コロナ慣れ」ともいえる状況が蔓延(まんえん)している。人流増によるコロナ第5波の爆発的な感染拡大が典型的な事例だが、企業業績にも悪影響を及ぼしているというから穏やかではない。

コロナ対策で過去最高の業績を記録したが…

「コロナ慣れ」が業績を直撃したのは、空間除菌をうたった「クレベリン」を製造する大幸薬品<4574>。9カ月間の変則決算だった2020年12月期は連結売上高が約175億8200万円、当期純利益が38億5100万円といずれも過去最高を更新した。

コロナ禍で消費者の除菌商品へのニーズが高まり、2020年に入るとクレベリンは店頭で品薄状態に。同4月から生産能力を拡大して前年の約3倍まで増やしたが、それでも供給が追いつかない状況が続いた。そこで同11月に大阪府茨木市でクレベリンを製造する新工場を建設し、売れ筋だった置き型タイプの生産能力を約10倍に引き上げた。

ところが第3波のピークに当たる2021年12月期第1四半期(1〜3月)に急ブレーキがかかる。クレベリンの売上高は前年同期比28.2%減の19億6000万円、ハンドスプレーやジェルなどの「クレベ&アンド」の売上高は同28.8%減の4億800万円と大幅に減少した。

この頃にはマスメディアで「空間除菌」の有効性に対する疑問が盛んに報じられ、クレベリンもその影響を受けた可能性が大きい。が、原因はそれだけではなさそうだ。

史上最悪の「第5波」も追い風とならず

コロナ対策の有効性が証明されているマスクやアルコール除菌剤も2020年前半には品不足が社会問題になったが、コロナ感染の第2波以降は感染者数が増加しているにもかかわらず店頭在庫は豊富で、価格下落が続いている。

「コロナ慣れ」した消費者が「店頭にあればとりあえず買う」消費行動を取らなくなった影響が大きいようだ。感染力が極めて高い「デルタ株」の流行でも、こうした「コロナ慣れ」の行動に変化は見えない。致死率が極めて高い変異株が出現しない限り、この状況は続きそうだ。

大幸薬品は2021年8月6日に、2021年12月期の連結決算予想を下方修正した。それによると売上高は前期を50億円下回る125億円、当期純利益は28億円の赤字に転落する見通しだ。

同社は業績悪化の理由を「除菌関連市場は、新型コロナウイルス感染症流行の長期化による不安度の鈍化やワクチン接種による効果への期待等から、他社の商品を含め店頭等での市場在庫の消化が進んでいない」と分析している。

クレベリンの棚卸資産は過剰状態となり、同社は評価減を適用。2021年12月期上半期で棚卸資産評価損17億2100万円を売上原価に計上する。コロナ禍は当面収まりそうにないが、クレベリンは早くも「後始末」の段階に入った。

文:M&A Online編集部


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