【2018年1月 M&Aサマリー】買収・子会社化は44件…「適時開示」ベースで

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M&A関連の企業発表が2018年も1月早々から連日続いている。このうち経営権の取得を伴う買収・子会社化の案件は、東証の「適時開示」ベースで44件あった(M&A  Online編集部集計)。スケールが最も大きいのが富士フイルムホールディングス(HD)<4901>による米ゼロックスの買収(6710億円)で、これを含めて1000億円以上は2件。1000億円未満~100億円以上は1件だった。買収資金の一部を仮想通貨で支払うというレアなケースもあった。

東証の適時開示は上場企業(東京、名古屋、福岡、札幌の各証券取引所上場)に義務付けられた「重要な会社情報の開示」のこと。公正な株価形成と投資家保護を目的としている。さまざまな開示情報のうち、ここでは買収・子会社化に限定したM&A案件にスポットをあてる。

IT・ソフト関連で活発

1月に発表された買収・子会社化は適時開示ベースで44件(対象企業が複数あっても同じ企業グループに属する場合は1件とカウント)。対象企業の分野としてはIT・ソフト開発関連が6件と最も多かった。

技術人材派遣サービスのテクノプロ・ホールディングス<6028>はアプリケーション開発などを手がけるプロビズモ(島根県出雲市)の全株式を17億円超で取得した。プロビズモは地元島根のほか、東京、大阪などに120人のエンジニアを抱える会社。シイエム・シイ<2185>はAI(人工知能)開発のシミュラティオ(横浜市)の株式を追加取得し、子会社化(出資比率約65%)。シミュラティオは情報通信研究機構発のベンチャーで、同社の子会社化でAIを活用したコンテンツ事業に弾みをつける狙いだ。

人材派遣関連は2件。キャリアリンク<6070>がだいこう証券ビジネス<8692>の人材派遣子会社を傘下に収めたほか、ITbook<3742>が新潟県を地盤とするコスモエンジニアリングを100%子会社化した。

第一生命ホールディングス<8750>は米生保のリバティライフが保有する個人保険と年金の既存契約(ブロック)を再保険形式で約1400億円で買収すること発表した。7月中に買収を完了する見通し。

楽天、朝日火災をTOBし損保参入

同じ金融関連で話題を呼んだのが楽天<4755>による朝日火災海上保険の買収だ。TOB株式公開買い付け)を行い、買付代金は最大で約449億円となる。朝日火災を傘下に置く野村ホールディングスはTOBに賛同を表明済み。楽天はすでに手がける銀行、証券、生命保険に加え、新たに損害保険事業に参入する。これにより、グループ内で金融業務をフルライン展開する体制が整う。

また、M&A資金の一部を仮想通貨で充当する事例も出てきた。情報サービスのカイカ<2315>はeワラント証券(東京都千代田区)の100%子会社に際し、株式取得金額9億円強のうち6000万円を仮想通貨(CAICAコイン)で充当する。

オイシックス、ドコモ傘下「らでぃっしゅぼーや」を買収

食品宅配事業でトップのオイシックスドット大地<3182>はNTTドコモ傘下で業界2位のらでぃしゅぼーや(東京都新宿区)を買収し、“大連合”が誕生する。これに合わせ、NTTドコモはオイシックスに3%出資し、両社で調理キット専用のECサイトを開設するなどの資本・業務提携を結んだ。

中小製造業が対象となった案件としては、イチネンホールディングス<9619>による昌弘機工(大阪府四条畷市、自動梱包機メーカー)、ダイキアクシス<4245>によるフジムラインベント(名古屋市、環境装置メーカー)の買収などがあった。

主要案件(金額上位) 内容
1    富士フイルムHD 米ゼロックスを6710億円で買収へ。株式50.1%を取得
2  第一生命HD 米リバティライフの既存保険契約を1400億円で買収
3  楽天 朝日火災海上保険をTOBへ。買付代金は約449億円
4  カイカ eワラント証券など3社の全株式を取得(約37億円)
5  テクノプロHD IT関連のプロビズモの全株式を取得(17億6500万円)
6  ラクス ソフトサービスを手がけるブレインメールの全株式を取得(15億7500万円)
7       ノダ
インドネシアの建具会社SURA INDAH WOOD INDUSTRIESを子会社化(15億9000万円)
8  アドベンチャー 商品券販売、スポーツウエア製造など3社を子会社化(14億5000 万円)
9  じげん 旅行予約サイト、アップルワールドHDを子会社化(14億3900万円)
10  オイシックスドット大地 NTTドコモ傘下の食品宅配、らでぃしゅぼーやを100%子会社化(10億円)
   
適時開示外の主要案件  
   NEC 英ITサービス企業、ノースゲート社を713億円で買収(全株式取得
   武田薬品工業 ベルギーのバイオ医薬企業、タイジェニックス社を約700億円で買収へ

最後に参考までに、東証の適時開示外で主要案件はどうか。一つはNEC<6701>による英ノースゲート・パブリック・サービス社の713億円での買収。ノースゲートはセキュリティー分野のITサービス企業で、英国の全警察や中央政府に強固な取引基盤を持つ。武田薬品工業<4502>はベルギーのバイオ医薬品企業タイジェニックス社をTOBにより約700億円で買収することを発表した。

とくに目立ったのはヘルスケア関連。日立製作所<6501>=画像診断レポート作成のIT企業、米ビジスターを買収、資生堂<4911>=米オリボから人工皮膚形成技術事業を買収、芙蓉総合リース<8424>=中古医療機器買取のFUJITAを買収、ニプロ<8086>=カナダの医療機器販売会社、カ―ディオメッドを買収という具合だった。

文:M&A Online編集部