中小企業庁は7月27日から、2021年度補正予算「事業承継・引継ぎ補助金」(2次締め切り)の申請を受け付ける。
25日には2022年度当初予算分の公募も始まったが、ここにきて浮き彫りになっているのが申請数と補助採択率の先細り傾向。岸田文雄首相は「スタートアップ担当大臣」の任命を表明するなど起業支援にシフトする構えも見せていて、補助金の在り方が改めて問われることになりそうだ。
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2次締め切り分の事業枠は2022年度当初予算分と同様、事業承継後の「経営革新事業」、M&A時の「専門家活用事業」、既存事業の経営資源を引き継ぐ「廃業・再チャレンジ事業」の3つ。2022年度当初予算分の補助上限額は経営革新事業が500万円、専門家活用事業が400万円だが、2021年度補正予算の2次分はいずれも600万円と手厚いのが特徴だ。
廃業・再チャレンジ事業の補助上限額は150万円で変わらないものの、経営革新事業と専門家活用事業を含めた3枠の補助率は2022年度当初予算分の2分の1を上回る3分の2となっている。
2次分の公募期間は9月2日までの予定で、2022年度当初予算(8月15日までの予定)と重複する。双方で同じ事業枠への申請は認められないことから、補助の条件が有利な2次分に流れる動きが強まるとみられる。
半面、中小企業庁が7月20日に公表した2021年度補正予算の1次分の採択結果によると、経営革新事業の補助採択率は50.2%にとどまった。専門家活用事業も51.5%、廃業・再チャレンジ事業も55.9%にすぎない。2021年度当初予算における専門家活用事業の補助採択率は87.4%だったことから、1次分は35%超の大幅なダウンとなった。
2021年度当初予算で270件だった専門家活用事業の申請数は1次分で790件と大幅に増えたが、2021年8月に国が登録制度を創設したM&A支援機関が企業側に補助金の活用を働きかけた結果とみられる。
補助採択率を底上げするためには申請手続きの精度を高めなければならないと同時に、事業者ニーズの実態に即した補助金運用の在り方を検証する余地があると言えそうだ。
さらに、事業承継・引継ぎ補助金のメインに位置付けられる経営革新事業の申請数は頭打ちの傾向で、1次分は2021年度当初予算の270件を下回る209件だった。1次分の廃業・再チャレンジ事業の申請数も34件しかなかった上、採択されたのはわずか19件に終わった。
●2021年度予算「事業承継・引継ぎ補助金」一次公募の採択率
2023年度当初予算の編成に向けては、過去2カ年の当初予算でそれぞれ16億円余りを計上した事業承継・引継ぎ補助金の処遇が注目される。
ただ、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の実行計画ではスタートアップの支援強化が柱に据えられ、年内に「スタートアップ5か年計画」が策定される予定。岸田首相は7月22日、長野県軽井沢町で開かれた経団連の会議で、スタートアップ政策の司令塔となる担当大臣を新設する考えも明らかにした。
こうした中、2022年6月には国の事業復活支援金の申請受け付けが終了し、新型コロナ関連の給付金はすべて打ち切られた。東京商工リサーチの調べによると、7月20日時点の新型コロナ関連の経営破たんは累計で3,887件に拡大。国内企業の1,000社に1社という水準に達しており、将来の成長戦略とは別に「今」を支える経済対策が急務となっている。
2022年は新型コロナ関連融資の元金据え置き期間が終わって返済が本格化した中小企業が増え、原材料価格の高騰なども資金繰りの厳しさに追い打ちをかけている。事業価値向上の効果が期待できるM&Aの重要性が増しているのは確かで、地域の経済団体などからは事業承継・引継ぎ補助金の継続・拡充を求める声が上がっている。
2021年度補正予算分の事業承継・引継ぎ補助金は2022年度中に計4回の公募期間を設け、M&Aのタイミングに応じて通年で申請できるように配慮する。一方、血税を投じた予算が組まれている補助金の効果を最大限に発揮するためにも、申請数と補助採択率の底上げを図る抜本的な施策が求められそうだ。
文:M&A Online編集部
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