日産、EV用充電池の「コストカット」に本気出す

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日産自動車<7201>が電気自動車(EV)用電池の「コストカット」に乗り出した。高騰しているレアメタル、コバルトの使用量を削減し、車載電池のコストを現在の1kwh当たり約150ドル(約1万6500円)から30年前後には3分の2の100ドル(約1万1000円)以下に引き下げる方針という。

「脱コバルト」でEVのコストダウンを目指す日産

コバルトは電池の正極材の一部として使われており、現行EVの「リーフ」では正極材の約2割を占めている。21年中に発売するSUV(スポーツ多目的車)タイプのEV「アリア」では、これを1割に半減。20年代半ばにはコバルトを一切使わない電池の実用化を目指す。

コバルトを使わない電池は、すでに中国製EVなどで利用されている。コバルトの代替材料として正極にリン酸鉄リチウムを使うLFP(リン酸鉄リチウム)電池だ。最低価格45万円の低価格EVで、米テスラの「モデル3」を追い抜いて2020年のベストセラーEVとなった上汽通用五菱汽車の「宏光MINI EV」に採用され、注目されている。

ただ、LFP電池は電池容量が従来のリチウムイオン電池と比べて小さく、航続距離が短い。日産はマンガンなど比較的低価格の素材を正極に利用するなど、低コストと性能を両立する電池開発を進めるという。

EVを普及するためには技術的な「割り切り」も必要

テスラに電池を供給するパナソニック<6752>は、すでに正極でコバルトの含有率を5%以下に引き下げており、コスト削減につながる「脱コバルト」では先行している。日産はこれから追いつくために「本気を出す」段階に入る。

しかし、「アリア」がヒットしなければ量産効果も出ないために、「脱コバルト」が成功しても車両価格の3割とも言われている電池コストが期待通りに下がらない事態も想定される。

日産は併せて「次世代EV用電池の本命」と言われている全固体電池の開発にも取り組んでいる。しかし、車載用の全固体電池についてはトヨタ自動車<7203>やテスラなど主要自動車メーカーが開発に取り組んでいるものの、安定量産するのは技術的に難しいとの声も。

業績が厳しく研究開発費に限りがある日産だけに、電池開発は的を絞った方が得策かもしれない。販売台数が稼げる低価格帯の小型EVには、すでに量産化に成功しているLFP電池の採用に踏み切るといった「割り切り」も必要だ。

国産車上位のトヨタとホンダ<7267>がEVに「乗り気」でないうちにEVの販売実績を積み上げ、「日本でのEVトップランナー」の地位を盤石なものにしておくことが、日産が生き残るために重要だろう。

文:M&A Online編集部