次の買収も工作機械メーカー?「日本電産」の戦略とは

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モーターメーカーの日本電産<6594>は、2022年1月末に、工作機械メーカーのOKK<6205>が実施する第三者割当増資を引き受け、子会社化する。同社は2021年8月に、三菱重工業の子会社で工作機械や切削工具の製造を手がける三菱重工工作機械(現日本電産マシンツール、滋賀県栗東市)を子会社化したばかりだ。

日本電産には、買収した企業(大きな石)を支えるために、小さな石にあたる企業を2、3社買う「詰め物買収」という考えがある。石垣が、大きな石の間に小さな石が詰まっていることで、壊れない構造となっていることから、この言葉が生まれた。

この方針通りに進むなら、OKKに次ぐ買収企業は、さらにもう1社工作機械メーカーとなる可能性は高そうだ。

詰め物買収とは

日本電産の永守重信会長(ロイター)

日本電産の永守重信会長は、詰め物買収の事例として「モーターの会社でありながら、主要部品であるステーター(銅線を巻き付けたモーターの固定部分)を外から買っている場合は、巻き線機のメーカーを買う」と説明している。

日本電産マシンツールは、歯車機械のトップメーカーであるほか、横中ぐりフライス盤(固定された加工対象物に回転する刃物をあてて削る機械)などの大型機や、微細加工のためのレーザー加工機なども手がけている。

同社の買収は、EV(電気自動車)用駆動モーターシステムの中核部品である歯車の技術力を強化するのが狙いで、日本電産は工作機械事業をグループ内に取り込むことで、歯車をはじめとする主要部品の内製化を進める計画だ。

一方のOKK は創業 100 年を超える老舗の機械メーカーで、汎用性の高い中小型のマシニングセンター(自動工具交換機能を持った工作機械で、削りや中ぐり、穴あけ、ねじ立てなどの加工ができる)を得意とする。

日本電産マシンツールの大型機とOKKの汎用性の高い中小型機を組み合わせることで小型部品の加工から大型部品の加工まで、幅広く対応できるようになるほか、両社の技術を集結させることで、新たな製品開発や、両社の製造拠点を活用した効率化や生産能力の拡大が見込めるとしている。

まさに大きな石である日本電産マシンツール(2021年3月期の売上高は約230億円)の発展を、小さな石であるOKK(2021年3月期の売上高は約120億円)が支える構図が当てはまる。この構造をさらに強固にするために、次の小さな石の買収が見込まれるわけだ。

日本電産ではOKK自体も日本電産のネットワークを活用することで、グローバル展開が可能になり、活躍する場面が拡大すると見ており、今後必要な投資を行っていくとしている。小さな石が大きく成長することも目論んでいるわけだ。

3期連続の当期赤字に

日本電産はこれまで業績が振るわないために買収金額が低く抑えられている企業を買収し、買収後に時間をかけ、その企業の価値を上げてきた実績がある。

OKKは2021年3月期に、営業、経常、当期の全段階で赤字に陥った。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、経済活動が停滞し、設備投資が抑制されたのが要因で、2022年3月期も厳しい状況が続き、営業損益、経常損益が2期連続の赤字、当期損益は3期連続に赤字になる見込み。

日本電産は54億7800万円を投じて、議決権ベースで66.65%のOKK株式を取得する。業績の振るわない企業を安く買うという買収方針はOKK(純資産約87億円)でも実現できているわけだ。日本電産はどのくらいの期間でOKKの企業価値を高め、大きな石に成長させることができるだろうか。

【OKKの業績推移】単位:億円、2022年3月期は予想

2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期
売上高 213.48 120.83 157
営業損益 1.41 △27.55 △3.4
経常損益 0.02 △24.74 △3.2
当期損益 △91.59 △24.25 △11

文:M&A Online編集部