【2月M&Aサマリー】3件減の77件、7カ月ぶりに前年下回る|三井物産が2カ月連続で首位案件

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三井物産の本社(東京・大手町)

2023年2月のM&A件数(適時開示ベース)は前年比3件減の77件となり、7カ月ぶりに前年を下回った。海外案件は18件と高水準で推移したものの、これまで牽引役だった国内案件のペースダウンが響いた。1~2月累計は170件で、前年を26件上回る。

一方、2月の取引金額は2886億円(公表分を集計)で、前年の3割程度にとどまった。

2月に80件割れは5年ぶり

上場企業に義務付けられている適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。

2月のM&A77件の内訳は買収60件、売却17件(買収側と売却側の双方が発表したケースは買収側でカウント)。2月として総件数が80件を下回るのは2018年以来5年ぶり。

全77件中、国境をまたぐ海外案件は18件。日本企業が買い手のアウトバウンド取引が11件に対し、外国企業が買い手のインバウンド取引は7件だった。

三井物産、給食大手を700億円で完全子会社化

金額トップは2カ月連続で三井物産の案件で、ターゲットは日米合弁給食会社のエームサービス(東京都港区)。現在、三井物産と米国アラマークが折半出資するが、約700億円を投じて米国側から50%を追加取得して完全子会社化する。意思決定を迅速化し、成長が見込まれるウェルネス(健康)分野の事業拡大を加速する狙い。4~6月中の買収完了を見込む。

エームサービスは1976年、三井物産とアラマークが合弁で設立。オフィス、工場をはじめ、病院、介護施設、学校、スポーツ施設などの食堂の運営を主力とし、全国約3900カ所で1日約130万食を提供する。売上高は1700億円を超える。

三井物産は1月、コールセンター事業のりらいあコミュニケーションズに対する600億円規模のTOB(株式公開買い付け)を発表しており、ここへきてM&A市場での露出度が際立つ。

金額2位は韓国の医療器具メーカー、テウンメディカルを約333億円で買収するオリンパス。テウンは胆道、食道、大腸、十二指腸などの消化器系器官の治療に用いる金属製ステントと呼ばれる製品を開発・製造し、この分野のリーディングカンパニーとされる。

オリンパスは内視鏡、治療機器を中心とする医療分野への経営資源の集中に伴い、企業買収を加速。この3年余りで医療分野での買収は米国、オランダ、イスラエル、英国に今回の韓国を合わせ5件に上り、投資金額も1000億円を超える。

1000億~数千億円クラスの巨大案件は今年に入ってまだ出ていない。しかし、2月は100億円超の案件が8件(1月は2件)を数え、比較的粒ぞろいだった。そのうち3件は岩崎電気、イハラサイエンス、メタップスによるMBO(経営陣による買収)が占めた。

動画配信のU‐NEXTとパラビが合併

動画配信業界では大型M&Aが表面化した。U‐NEXT(東京都品川区)と、「Paravi(パラビ)」を運営するプレミアム・プラットフォーム・ジャパン(東京都港区)が3月31日に合併することを発表した。合併により、有料会員数は370万人を超え、国内勢最大手となる。現在、日本の動画配信市場でトップに立つアメリカ発のネットフリックスを追撃する。

存続会社のU-NEXTは、USEN‐NEXT HOLDINGSの子会社。一方の「Paravi」の運営会社はTBSホールディングスを筆頭株主とし、日本経済新聞社、テレビ東京ホールディングスなどが大株主として名を連ねる。

コロナ禍による「巣ごもり需要」で、市場が大きく広がったのが動画配信サービス。今後成長が見込まれているものの、足元では、巣ごもり需要の落ち着きで伸びが鈍化している。しかも、外資勢に加え、国内勢もテレビ系、通信系、ネット系などに分かれ、主要プレーヤーだけで20社近くがひしめく。今回のU-NEXT、Paraviの合併が業界再編の引き金になる可能性がある。

横浜銀、神奈川銀にTOB

地方銀行の再編の動きが今年も続いている。コンコルディア・フィナンシャルグループは傘下の横浜銀行(横浜市)を通じて、第二地方銀行の神奈川銀行(横浜市、非上場)を買収する。横浜銀がTOBを行い、4月をめどに神奈川銀を完全子会社化する。買付代金は約82億円。

横浜銀行は2016年に、東日本銀行(東京都中央区)と経営統合し、共同持ち株会社のコンコルディア・フィナンシャルグループを発足した。

◎2月M&A:金額上位(10億円以上)

1 三井物産 日米合弁給食大手のエームサービス(東京都港区)を子会社化 700億円
2 オリンパス 消化器用金属製ステント開発・製造の韓国テウンメディカルを子会社化 333億円
3 岩崎電気 米投資ファンドのカーライル・グループと連携し、MBOで株式を非公開化 327億円
4 イハラサイエンス MBOで株式を非公開化 323億円
5 出光興産 オーストラリア「エンシャム石炭鉱山」の全保有権益を現地Sungelaに譲渡 310億円
6 日本エスコン 不動産賃貸の四条大宮ビル(京都市)を子会社化 300億円
7 メタップス MBOで株式を非公開化 149億円
8 日医工 ジェネリック医薬品製造の北米2子会社をシンガポールEllimistに譲渡 136億円
9 コンコルディア・フィナンシャルグループ 傘下の横浜銀行が神奈川銀行をTOBで子会社化 82.3億円
10 ジーニー 広告プラットフォーム事業の米国Zeltoに追加出資し子会社化 57.6億円
11 ヤマハ 米国ギターメーカーのCordobaを子会社化 51億円
12 エンビプロ・ホールディングス 工業用ゴム製品メーカーの日東化工をTOBで子会社化 18.8億円
13 BRUNO バッグ製造子会社のシカタ(京都市)の自社株取得に応じて譲渡 18億円
14 森永乳業 植物由来食品メーカーの米国Turtle Island Foodsを子会社化 16.2億円

文:M&A Online編集部

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